またAさんは、その人の良くない点を褒め言葉で伝えることに関しても、違和感を抱いている。

Aさん「良くない点を褒め言葉で伝えていたら、直らないじゃないですか。人の意見を聞かない部下に対して『君はこだわりがあるね』って言えという。そうした風潮はどうも納得できなくて…」
筆者「そうですね。これは、心理学の手法を間違った形で取り入れているんですよ」
Aさん「えっ、どういうことですか?」

 私がホワイトボードに、慎重、優柔不断、短所、長所の関係図を書きながら説明する。

筆者「優柔不断という性格は、慎重さと裏表の関係です。優柔不断だって思うと自分がダメだと後ろ向きになりますが、慎重なところがいいって言われると前向きになれますよね」
Aさん「確かにそうですね」
筆者「自身の短所ばかりを考えてしまい、気持ちが萎縮しがちな人へのアドバイスとして、短所の裏側にある長所を見つけてみようと言い換えを勧めるんです。そうすると気持ちが前向きになれますから」
Aさん「なるほど。他人が言い換えるんじゃないんですね。それならわかります」
筆者「基本はそうなんです。でも、先ほどの褒め方の研修は、そこのところを勘違いしてしまっているため、改善ができないんだと思いますよ」
Aさん「どうすれば改善を促すことができるんですか?」

 これについては、後ほど具体的に解説することにしよう。

褒めて育てる風潮が
広がってしまった背景

 企業の管理職や研修担当者が叱ることを躊躇し、褒め方を気にするようになった背景には、注意しただけでも辞めてしまう若者が増えてきたことにある。

 実際、若者たちと話すと、「褒められたい」という思いが非常に強く、承認欲求の虜になっているのがわかる。そして、彼らは

「褒められないとヤル気をなくしますね」
「厳しいことを言われるとへこみます」
「私は、褒められて伸びるタイプなんです」

 などと言う。

「ウチの上司、全く褒めてくれないから、気分が上がらない」
「ウチの上司は褒めることは褒めるけど、褒め方が下手だから、ダメですね」

 というように、上司の褒め方について上から目線で批判する若者さえいる。