40度超えの猛暑が続くこの夏、空調大手ダイキン工業の滋賀製作所は、休日返上でフル稼働状態だ。家庭用エアコンの生産状況は7~9月で計画比110%を想定している。
ここで生産されているフラッグシップ機「うるさら7(セブン)」は、2012年11月に発売されて以来、販売台数約100万台を超えるヒット商品だ。商品名はモデルチェンジ前のブランド名「うるるとさらら」の略語と、特撮ヒーローのウルトラセブンを掛け合わせている。
滋賀製作所は今でこそ活気ある現場だが、10年前の様子は違った。当時は、安価な中国メーカーのエアコンが台頭し、日本メーカーはコスト競争力を付けるために、海外に生産拠点を置き換えた結果、国内工場はガラガラになっていた。
08年3月、ダイキンも中国の格力電器と提携し、ボリュームゾーンの廉価型機種を中国で生産開始した。格力への委託台数が増えるにつれ、滋賀製作所の減産が問題になり、サプライチェーンにも甚大な被害が出た。
初代うるるとさららの室外機の開発を経験し、廉価型エアコンの開発責任者だったダイキン空調生産本部小型RA商品グループリーダーで主任技師の岡本高宏は、ダイキンのサプライヤーの生産ラインが半分しか稼働せず、現場から人がどんどんいなくなっていく様子を目の当たりにした。