若年性認知症では就労継続が焦点に

「明日の記憶」ジャケット
「明日の記憶」 DVD発売中 価格:3800円(税込4104円) 東映ビデオ

 近年、クローズアップされているのが若年性認知症です。「認知症は高齢者の症状」という意識がありますが、新オレンジプランでは若年性認知症の支援強化を柱の一つに据えており、これをテーマとした映画としては、2006年製作の『明日の記憶』を挙げることができます。

 主人公の佐伯雅行(渡辺謙)は広告代理店の管理職を務める49歳。大型契約を取るなど働き盛りでしたが、タレントの名前を思い出せないとか、車の鍵の置き場所を忘れるなど、些細な違和感を持つに至ります。

 雅行は当初、仕事の疲れや年齢の影響と思っていたのですが、重要な仕事の打ち合わせを忘れたり、同じ商品を何度も買ったりするようになったため、妻の枝実子(樋口可南子)とともに病院に行きます。

 そこで、精神科医の吉田武宏(及川光博)が「長谷川式」と呼ばれる簡易テストや画像診断による精密検査を実施し、アルツハイマー型認知症と診断します。ショックを受けた雅行は仕事を何とか続けようとしますが、お得意さんに行く道や会議の日程を忘れるなど業務に支障が出るようになり、上司から希望退職を勧められます。

 ただ、雅行は会社に残留することを望みました。娘の梨恵(吹石一恵)が結婚式を控えており、それが終わるまで会社に残りたかったのです。

 結局、雅行は左遷ポストへの降格人事を受け入れ、梨恵の結婚式が終わった後、26年間働いた会社を辞めます。さらに、雅行の在宅ケアは3年近くも続くことになり、記憶や自我を失うことに対する雅行の不安と、ケアと生計の両立を図る枝実子の苦労が描かれています。

 詳細はDVDでご覧いただくとして、この映画を見ると「認知症=高齢者の症状」とは言い切れないこと、若年性認知症の場合には仕事の継続がポイントになることを理解できます。

 同じように若年性認知症を取り上げた映画として、今年、日本で公開された『蝶の眠り』があります。映画は主役の小説家、松村涼子(中山美穂)がアルツハイマー型認知症となる設定で、『明日の記憶』の雅行と同様、記憶や能力を失うことに対する不安といら立ちが中心的に描かれています。