ギリシャ問題は身から出た錆
ではなくEU全体の問題

 筆者は今年7月、ある研究会で、ギリシャの元国会議員で現ロンドン大学東洋アフリカ研究学院教授のコスタス・ラパヴィツァス氏の話を聞く機会を得た。ギリシャ再生の処方箋に関する意見を求めた際、彼はユーロ離脱などいくつかの選択肢を提示したが、同時にその実現のためには極めて高い政治的なハードルを越える必要があると力説していた。

 実際に、ユーロ離脱は簡単なことではない。ギリシャにとってユーロ離脱と新通貨の導入は為替切り下げを意味する。当然、国民の資産は目減りを余儀なくされる。年金の手取り額も一段と減少するだろう。何より、輸入依存度が高いギリシャの場合、日々の経済活動が立ち行かなくなる可能性さえ否定できない。

 つまりユーロ離脱は、ギリシャにとってユーロ残留以上に険しい道となる。それがわかっているからこそ、ギリシャ国民はユーロ離脱を選択しなかったし、できなかった。ユーロに加盟した以上、ギリシャはEUから課される様々な条件を甘んじて受けなければならない。それはそれで、仕方のないことでもある。

 しかしながら、これを身から出た錆としてギリシャを一方的に断罪することも適当とは言えない。そもそもギリシャにユーロ加盟を許したのは、債務の減免に否定的な態度をとり続けたドイツなどの支援国である。またそうした支援国の金融機関がギリシャに多額の貸し込みを行ったことも、紛れもない事実である。

 ギリシャの問題は、金融市場がEUの制度的な欠陥の虚を突いた結果、生じたものである。つまりギリシャの問題は、本質的にはEU全体の問題である。

 ギリシャへの金融支援終了に当たって、EUにもまた、通貨統合の在り方や通貨統合下で経済危機が生じた際の対処法について、抜本的な再考が求められるところである。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部 研究員 土田陽介)