筆者ももみくちゃになりながら関係者や観光客に話を聞いたが、総じて「赤字補填のため、役所が調整して慣習を壊すなんて」という批判の声が多かった。印象的だったのが「阿呆になるための祭りで金勘定を考えたら、阿呆にばかにされるで」だった。

 地元報道によると、山田実振興協会理事長は「皆さんの熱気を受け止めた。やってよかった。これが庶民の声だと市長に分かってほしい」、市長は「(中止を要請したのに)無視したのは遺憾。今後の対応は実行委で協議する」とコメントした。

累積赤字4億、運営団体破綻

 今回の不協和音には前兆があった。

 全国紙徳島支局記者によると、予想された結果で「小さな小競り合いみたいなケンカはあったが、暴動みたいなことにならなくてよかった」と安堵していた。それほどに、今回の阿波おどりには警戒感が強かったということだ。

 背景に何があったのか。

 阿波おどりは昨年まで公益社団法人「徳島市観光協会(破産手続き中。以下、協会)」と地元紙「徳島新聞社(以下、新聞社)」が共催していた。協会の決算によると、2001~2016年まで収入は年間2億円台で、収入源はほとんどが阿波おどりの観覧席チケット。しかし、黒字は2007~2009年の3年間だけだった。

 昨年6月、協会の4億円超の累積赤字が発覚した。

 徳島市は金融機関と協会の損失を補填する契約を結んでいたが、補償限度額が2004年以降、なぜか6億円になっていた。危機感を抱いた徳島市は、協会と新聞社に限度額を累積赤字額まで引き下げ、収支を改善するよう促した。

 その上で徳島市は、協会と新聞社に運営改善のため三者協議会を設置したが、協会は2回の参加要請を拒否。徳島市は昨年11月、地方自治法に基づき弁護士らによる第三者調査団の会計監査に乗り出した。

 結果、判明したのは会計規約に反する処理の数々だった。調査団は「あまりに杜撰(ずさん)。事業継続は困難」と結論した。

 これを受け、徳島市は協会に対し、2018年の損失補填、補助金交付も拒否。協会は資金繰りに窮し、金融機関に借入金返済は不能と通知した。債権を移譲された徳島市は今年3月、協会の破産手続き開始を徳島地裁に申し立てる事態になった。