(2) 性欲の低下

 結婚のメリットの一つとして、セックスの相手を安定的に確保できることが挙げられる。特に、性欲の強い(主として若い)男性にとって、セックスの相手を確保することは、相当に切実な問題であり、結婚を決断する重要なインセンティブの一つだった。

 ところが、近年、特に男性の平均的な性欲のレベルが低下していて、結婚によってセックスの相手を安定的に確保することのベネフィットが低下しているように感じられる。

 セックス回数を国際比較したデータは数多く見当たるものの、平均的な日本男性の性欲のレベルを時代別に比較した包括的な調査データは見つけられないが、ネットで医師が書いている記事(※例えば、https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20131015-OYTEW54200/)などを読むと、どうやら日本人のセックスの回数は時代と共に減少傾向にあるようだ。

 社会的な「結婚していない同士でもセックスしていい」ということに対する寛容性はむしろ強化されているから、原因は、特に男性側の性欲自体の低下ではないかと推察される。

 何らかの健康的・環境的要因で欲求自体が生理的に低下したのかもしれないし、情報技術の進歩などによって新たな娯楽が生まれて、「恋愛&セックス」の相対的な地位が低下したのかもしれない。

 もともと結婚は、自分の稼ぎを自分だけで使えなくなるといった経済的な自由度の低下や、将来の別の恋愛に対する自由度の制約など、大きな「自由度を制約するコスト」が伴う選択肢だ。

 プロポーズは「このコストを払ってでも相手を確保することに価値がある」と判断して行うもので、いわば恋愛に「バブル」が起きて、「恋愛バブル」の価格の方が「自由度制約のコスト」を上回った時に発生する行為だ。

 しかし、恋愛の強力な推進力であるはずの性欲が低下すると、「恋愛バブル」が結婚の決意に十分なほどに起きない可能性が大きくなる(注:バブルとは、一般に、「長期的には維持できないほど割高な資産価格が一時的に形成される現象」を指す)。

 性欲が低下したから結婚が減ったというのは、あまりにストレートな原因・結果の推測だが、確かに存在する理由の一つではないだろうか。

 また、性欲減少が需要サイドの理由なら、供給サイドの理由として結婚状態でなくてもセックスがし易くなった社会の変化や、セックス以外の娯楽の発達も理由として考えられる。これらいずれも、「高いコストを払ってでも相手を確保する」結婚という選択肢のベネフィット減少につながっている。