「堀江さんの先進的な考え方にはずっと感化されてきましたね。ある著書のなかで、『仕事を引き受ける時代は終わった。これからはリスクを取ってでも自分で仕事を作っていく時代だ』みたいなことを語っているんですが、それを読んだとき“これだ”と思ったんです。それからいつか会社を辞めて、独立しなきゃって焦りのような気持ちが生まれた。それはいいんですが、それからの自分は、目の前の仕事をついつい軽視するようになり、社外人脈を拡げることに夢中になったり、闇雲に起業セミナーの類に時間とカネを使ってしまったなあという反省はあります。起業こそ善、みたいな空気に流されてきてしまったのかな」

 そう語る山下さんの表情は、どこか自信なさげに見えた。

売り上げは月50万円
生活費は10万円の苦しい現状

 現在、山下さんの会社の売り上げは、月によって異なるが平均すると50万円弱。その大半が、以前の会社から下請けとして降りてくるコンサル業務だという。巣鴨にある自宅兼事務所の家賃は8万円。彼が行っているEコマースのコンサル業務はネット上での指導が主なので、たいした経費はかからないというが、このままではフリーランス時代の生活と変わらない。事業規模を拡大していく意図はあるのか。

時々、以前勤めていたIT企業時代の上司にご馳走してもらうという山下さん(右) 右が山下氏

「独身なのでまだマシですが、正直、社長としての給料はいまだゼロ円です。一部業務を法人ではなく個人で受けることで、辛うじて生活費が出ている状態。それが月に10万円程度。食事と仕事の交通費でほぼ消えてしまいます。体験を売るサイトを作るのが夢ですが、とりあえず今は、無理やりにでもルーティンの仕事を取ってきて、借金してでも社員を雇って売り上げを増やさないと、ジリ貧になるだけだと思っています。このままでは、なんのために会社を興したのかわからない。そろそろ勝負に出ないといけないのはわかっているんですが、なかなか今の事業に自信が持てなくて…」

「スタートアップ」と聞くとかっこいいイメージがあるが、新規に起業して5年以上持つ会社は10パーセントにも満たないとも言われている。大半は失敗に終わるのが現実なのだ。

 しかし、意識高い系界隈の言説に躍らされ、今、日本では、山下さんのような“マイルド貧困社長”が続々と生まれている。