先日、とあるイベントで対談をした。『転職後、最初の1年にやるべきこと』という本を2004年に出版して以来、人材ビジネスに関わる方たちがかなり使ってくれているというので、その内容について話したのだ。
私はかつて企業に常駐するコンサルタント(世間ではハンズオン型のコンサルタントというらしい)をしていたことがある。契約するやいなや、いきなり当該の会社に行って、その日からその会社の人のごとく扱われるというかなりシビアな環境に身を置いていた。会社のルールや暗黙のおきてのようなものは1日2日でわかるものではなく、理解するために本当に苦労した。そのときの失敗と苦労をもとに、新しい職場にできるだけ早くなじむための56項目のヒントをまとめたものが前述の本である。
何度も冷や汗をかきながら学んだのは、新しい職場になじむには、そこにいる人たちとの接触回数を増やし、できるだけたくさんの話をして教えを請うしかないということだ。手っ取り早いのは「飲みに行く」ことかもしれないし、そう指南する人や本も多い。もちろん行きたい人は行けばいいと思う。しかし、私のようにあまり飲めない人間、いやそうでなくても行きたくない人もいるだろう。
では会社にいる時間に、いかに振る舞えばよいのか、何に気をつけて行動すればよいのか、どういう心構えでいればいいのか。本の56項目を全部挙げる紙幅の余裕はないので、本のエッセンスを抽出してここにまとめてみようと思う。誰でも今日からできる簡単な5ヵ条である。
【新しい職場になじむ方法その1】
名前を呼ぶ
名前を呼ぼう。ええっ、と思われるかもしれないが、こんなささいなことで、ぐっと仕事がやりやすくなり、職場の人との距離が急に近くなるものなのだ。配属されたら、その日のうちに同じチームの全員の名前と顔を覚え、会話の中で使ってみよう。
日本語は主語なしの会話が自然だから、名前を呼ぶことに慣れていない人も多いかもしれない。シャイな人は呼びかけることを躊躇しがちである。しかし、恥ずかしくても呼びにくくても、とにかく名前を呼ぼう。
ネームコーリング効果といって、人は自分の名前に愛着があるため、名前を呼ばれると、呼んでくれた人のことを「自分に興味を持ってくれている、尊重してくれている、敵ではない」と認識して、仲間として認知するようになるのだ。
新しい職場でなくても、異動でも、プロジェクトで初めて一緒になる場合でも、とにかく会ったその日から名前を呼ぶことをおすすめする。おそらくこれができれば、8割がた、会社になじめたも同然と思っていい。そのくらい効果があるのだ。