転職の知らせを聞くことの多い春。あなたの身近にも、異業種や異なる業界への転職を決めた人がいるのではないだろうか。業界や業種が異なれば、これまで「当たり前」だった常識が非常識となることもある。中には「独特」とも言えるルールは存在しているもの。異業種に転職し、「信じられない常識」に仰天した経験を持つ男女にエピソードを聞いてみた。(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)
「えっ? あの人、あの会社に転職したの?」
新卒で入った会社に一生勤め続ける――。そんな時代はとうに過ぎ去り、今や一度や二度の転職は珍しくなくなった。同じ業界内を“移動”する人だけではなく、前職とは全く異なる業界へ足を踏み入れる人も少なくない。知り合いの転職先に驚いた経験のある人も、少なくないだろう。
そのときに直面するのは「業界ならではの常識」である。小さなものから大きなものまで、「決まりごと」や「ルール」までをも含めると、「特殊」とも言える常識が1つや2つは根づいているはず。異業種への転職経験者なら、その違いを感じたことがあるはずだ。
つまり、業界内の常識は世の中の非常識、といっても過言ではない。業界の常識は他の業界・業種にとっては、ときとして非常識に映ることがあるのだ。今回は異業種に転職したとき、常識の違いに驚いたエピソードを男女5人に尋ねてみた。
業界や業種、それよりも細かい単位である会社によって、これほどまでに常識が異なるのか……と驚く話を聞き出すことができた。
【IT→不動産】
コミュニケーションは顔を合わせて
ペーパーレスから紙文化に逆戻り
1人目は35歳女性のAさん。長年勤めたIT業界から3年前、不動産業界に転職を果たした。現在は財閥系マンションデベロッパーで営業職として働いている。
「IT業界時代はペーパーレス文化が浸透し、何かをプリントアウトする機会はほぼありませんでした。印刷ボタンを押したとき、どこのプリンタから出力されるかですら曖昧だったほど。でも、不動産業界に来てからは、日々大量の契約書を取り扱い、もっぱら紙文化です」
デジタル化が進んだ前職とは対極的なアナログ体質の現職――。その「常識」に最初は慣れなかった、とAさん。「資料を電子化してメール配布すれば紙の節約になるのに」と思いながら簡単な資料を大量に印刷したときは、戸惑いもあったと振り返る。アナログといえば、コミュニケーションも同様だという。