総資産額は、資産運用の結果、予定外の収入・支出、働いた場合の稼ぎなどで変化するので、計算は毎年行って取り崩し額を増減させるべきだ。

 なお、「3%」などといった運用利回りがあることを前提にして資産を取り崩すのは、やめた方がいい。運用は当てにならないし、個人が失敗しても、企業年金が母体企業に損失の穴埋めをしてもらえるような形での救済措置が期待できないからだ。

 一方、高齢だからといって、お金が増えて困るわけではないので、取ってもいいリスクの範囲内で運用することは全く構わないという理解は重要だ。将来の必要額に見当がつきやすい高齢者の場合、若者よりも大きな運用リスクを取って問題ないケースが多々ある。かの有名投資家ウォーレン・バフェット氏は87歳の後期高齢者なのだから、遠慮はいらない。

 しかし、(3)の運用リスクを取るか否かについては、「相場にハラハラするのはごめんだ」、「わけの分からないリスクは取りたくない」といった方が多いのではないかと想像する。それなら、それで結構ではないかと筆者は思う。

 近年は、「資産寿命を延ばしましょう」などといった甘言で、リスクを取った運用に勧誘し、例えば年金支給のない奇数月に分配するといった投資信託など、運用で資産の寿命が伸びることを強調した商品が、主に退職者世代向けに売られていたりもする。だが、これらの商品は運用の内容面でも手数料面でも、仕組みとしてもはっきりダメだと断言できるものばかりなのでやめておこう。

奇数月の分配を強調する商品には要注意

 特に「奇数月の分配」を強調する商品を売りにきた場合は、判断力が乏しくて勧誘しやすいと年寄り扱いし、あなたを舐めている証拠なので、その金融機関やセールスマンとは縁を切るべきだ。

 さて、実はアドバイス上、気が重いのは、(2)の取引金融機関の選択だ。多くの方が、これまで付き合いのあった金融機関やセールス担当者との縁を切りたくないと思っているのではないかと想像する。

 今回のご夫婦のような高齢の場合、対面型営業の証券会社のセールスマンと渡り合うのは負担で危険なことであり、ラップでの運用をしつこく勧めるようなタチの悪い営業をしてくるので、「全ての商品を解約・換金して取り引きを打ち切り、銀行1行に金融資産を集約してください」とアドバイスした。

「そうしてからでなければ、次の質問は受け付けません」と突き放したのだが、正直なところ、ご夫婦が解約しきれないのではないかという心配はある。