聞けば、恋人はその彼氏と江本さんと二股交際をしているという。彼は、江本さんに彼女を取られまいと直談判に来たが、顔を見たら頭に血が上って殴り掛かってしまったそうだ。

「どうやって僕の家を知ったのか聞きました。彼女が教えたのかと思いきや、彼が自分で調べたと言っていました。彼女のLINEの画面を盗み見て、僕の名前を特定。そこから、Facebookをはじめ各種SNSを探したり、Web検索で勤めている会社を見つけたり。たまたまインターネットに掲載されていた、僕の中学時代の作文まで読んだそうです。

 自宅の建物におおよそのあたりをつけて、あとは表札を確認したり、ポストの中を覗き見て僕の部屋までたどり着いたと。そこまで話を聞いたら、彼の執念に驚いたし『彼女をものすごく必要としている人なんだな』と感じて、僕は身を引くことにしました」(江本さん)

 今となっては笑い話です、と言っていた江本さん。しかし当時は、探偵でも警察でもない一般男性がインターネットと自分の足を駆使してそこまで特定したことが恐ろしく、その部屋からは数ヵ月後に引っ越した。

インターネットに載せる情報・載せない情報
自分で選択することが最大の自衛

 今回、インターネット上の情報から個人や自宅などを「特定」された人に話を聞いた。イメージと違ったのは、悪意がある書き込みや攻撃的なSNSの利用の仕方をしていなくても、ネット上のサービスを普通に使用していただけで特定されているということだ。

 また、1つのサービスのアカウントや1枚の写真が、芋づる式に本人にたどり着くことが可能だということもわかった。それは、SNS利用やWeb検索がある程度できる人であれば誰でもできることなのだ。

 しかしながら、すべてのインターネットサービスを遮断して生きていくことは難しい。たとえSNSのアカウントは持っていなくても、個人のメールアドレスを持っている人は多いだろう。野上さんのように、友人・知人がアップロードした情報から個人情報が特定されるという場合もある。

 過去にストーカーをしていた女性がツイッターで「顔写真とか近所の写真とか、アップするの、絶対にオススメいたしません」と警鐘を鳴らしていたことがあった。今や自分の情報についてすべてをコントロールすることが難しい世の中だ。その現状を理解したうえで、「こういう情報は絶対にインターネットにはアップしない」という自分のラインを決め守っていくことが、今、我々にできる最大限の自衛となるのかもしれない。