歌詞どおりに結婚した社員も

 私のカラオケのレパートリーはおそらく2000を超える。努力したわけではない。物心ついたときから歌が大好きなのだ。

 音楽は、ひとを感動させたり、ひとをその気にさせたりという作用において、最も力をもつ。

 世界中のどの軍隊も音楽隊をもっている。
 軍隊で楽隊の音楽は、士気を高め、規律を促し、ものごとのはじまりと終わりを明確に伝えたりもする。戦争映画にしばしば登場する起床ラッパに進軍ラッパなどは、その最もシンプルな音楽の活用例だろう。音楽は記憶にも大いに作用する。

 学生時代、初恋の思い出、社会人になりたてのころの気持ち、苦労を重ねた仕事の数々。その当時に流行った曲やよく口ずさんだフレーズを耳にすると、まざまざといろいろなシーンを思い出すことがある。

 私の場合は、加山雄三さんの『お嫁においで』を聴くと、高速船の航路を博多~韓国・釜山間に開設したころの苦労した時期を思い出す。不安定な天候に翻弄されて、船の就航率がなかなか上がらない。

 社員の士気も、放っておくと下がってしまいそうなとき、私はアフターファイブでこの曲をしばしば歌った(詳細の歌詞は本書に記した)

 100%明るい、根っから明るいメロディで明るい未来を見据えた歌詞のこの曲をみんなとともに歌い、新しい事業で自然環境も困難だが頑張ろう!と誓いあった。

 余談だが、歌詞のとおり、この船の職場の社員同士のカップルが誕生し、めでたく結婚までたどり着いたのも数組ある。