ZOZOTOWN スタートトゥデイの強さの秘訣は、前澤社長の知名度だけではありません 写真:つのだよしお/アフロ

海外では、UberやAirbnbなど、新たなビジネスモデルと共に急成長を遂げた企業が数多く誕生しています。一方、日本企業でもイノベーションは起こり始めています。世界に影響を与えるイノベーションは、必ずしも大企業から生まれるばかりではありません。圧倒的に成長する企業は、前例や常識にとらわれることなく、人材の力を引き出す工夫を凝らしています。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が事業を支える企業を紹介していきます。今回はスタートトゥデイ(2018年10月からは「ZOZO」に社名変更)を取り上げます。

時価総額1兆円を突破
気づけば誰もが知る存在の「ZOZOTOWN」

 ここ最近、メディアで取り上げられることの多いファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ。社長である前澤友作氏の名前をご存じの方も多いと思います。どうしてもメディアからは前澤氏の資産や私生活の面が取り沙汰されることが多いですが、今回は、スタートトゥデイの人事に関わる取り組みに着目していきましょう。

 スタートトゥデイに対しては、「インターネットで衣類を販売しているベンチャー企業」という印象を持たれる方が多いかと思います。しかし、同社はただのベンチャー企業ではありません。社員数はおよそ900人の会社で、いわゆる大企業という規模ではないかもしれませんが、売上規模は1000億円に迫り、時価総額は1兆円を超えています。

 日本企業で時価総額が1兆円を超えているのは、全体の3パーセントに過ぎません。これは特筆すべき企業価値の高さであり、さらには、メディアが前澤氏の話題を連日取り上げることで、広告宣伝費用を全く支払うことなく、ZOZOTOWNはその名前を日本全国に知らしめています。

 今の時代は、テレビやネットで気になる報道を見かけると、即座にネット検索されます。ZOZOTOWNはまさにネットを介したサービスなので、一目でユーザーの興味を引くことができれば、即座に顧客の増加につながります。

 ベンチャー企業や中堅企業にとって最も高いハードルは、「知ってもらうこと」です。スタートトゥデイは、ほとんどコストをかけることなく、このハードルをクリアし、大きな宣伝効果を得ているのです。

 そしてこれは、人事における課題の解決にも多大なメリットをもたらしています。