この点については、どの先進国も共通の傾向が見られました。実際、「フルタイムの家事専従者(注:いわゆる専業主婦)という役割は、第2次世界大戦まではまさに特権階級のみの贅沢であり、(略)戦後20、30年の間に多くの要因があいまって、(略)労働者階級の家族がこのモデルをまねることが可能になった」とし、その要因の一つとして男性労働者の所得増加が指摘されています(エスピン=アンデルセン『平等と効率の福祉革命』)。

 つまり、戦後の経済成長を受けて、ごく一握りの富裕層に限られていた「専業主婦」モデルが社会全体に拡大したというのです。

 日本も似たり寄ったりでした。日本の場合、欧米よりも遅れて工業化した分、女性が家業から抜け出して主婦化する動きと、女性の雇用労働化が同時に進展したといい、総じてみれば「日本の女性はよく働いていた」(筒井淳也『仕事と家族』)という違いがあるそうですが、それでも男女分業化の進展は多かれ少なかれ世界共通の事象だったと言えます。

 しかし、日本の社会保障制度は1960年代に確立しており、当時の男女分業化を今も引きずっている面があります。そんな当時の社会の認識を示す一幕が1962年製作の『閉店時間』に出てきます。

映画の舞台は百貨店
3人の女性の働き方がテーマ

『閉店時間』ジャケット
『閉店時間』 価格:DVD¥2,500(税抜) 発売元・販売元:株式会社KADOKAWA

 映画の主人公は松野紀美子(若尾文子)。「丸高デパート」という一流の百貨店で呉服販売を担当しており、同じ高校を卒業した藤田節子(野添ひとみ)、牧サユリ(江波杏子)と悩みや愚痴を言い合う仲でした。そして、3人の人生観や仕事観、結婚観は三者三様という設定です。

 具体的には、呉服売り場で働く紀美子は、男性と対等に仕事をバリバリやりつつ、閉店後は視覚障害者用に本を朗読してテープに録音するボランティアにも従事する真面目なタイプ。これに対し、お総菜コーナーで働く節子は家庭的、エレベーターのオペレーターを務めるサユリは派手好きで開放的という設定で、大卒新入社員の生方誠(川口浩)などが絡みつつ、映画のストーリーは展開していきます。