街を歩けば、オフィスや商業施設、工事現場など、いたるところで目にする警備員の存在。多くの人が知っているようで知らない警備ビジネスの実態を、仙台大学体育学部准教授で、著書『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書)がある田中智仁氏に聞いた。(清談社 福田晃広)
セコム誕生は1962年
東京五輪が警備業界拡大の契機に
2018年7月、警察庁が公表した「平成29年における警備業の概況」によると、2017年12月末時点で日本全国の警備会社数は9548社で、警備員数は55万2405人。ここ数年、わずかではあるが増加傾向にあり、警備業界の拡大は続いているといっていいだろう。
日本の警備会社の草分け的存在である「日本警備保障」(現・セコム)が設立されたのは1962年、高度経済成長期の中盤だった。日本人の働き方が大きく変化し、自営業者と家族従業者が減少、代わりに被雇用者が増えて、サラリーマンが一般化した時代だ。当時の警備業務の実態について、田中氏はこう説明する。
「当時の主な警備業務は、オフィスビルや工場などの施設警備と巡回警備でした。しかし、守衛や宿直は専門的な警備技術を体得していない人がほとんどで、警備体制は脆弱。そこにビジネスチャンスが潜んでいたのです」(田中氏、以下同)
警備会社の存在が注目されるようになったのは、1964年の東京オリンピックで、選手村などの警備に当たったことによる。さらに翌年にはテレビドラマ『ザ・ガードマン』が大ヒットしたことで、警備業という仕事の知名度は急上昇したといわれている。