37mpgは、カリフォルニアをはじめ現在連邦政府が定める排出ガス規制よりも厳しい法を持つすべての州にも適用され、各州が持つ独自の排出ガス規制法は強制的に廃止となる見込みだ。

 環境保護団体からは「クルマの排出ガスは大気汚染原因のナンバーワン要素であり、このような規制法の後退は環境問題に大きな影響を及ぼす」と政府を批判しているが、自動車メーカーからは「いずれにせよクルマは、よりクリーンな方向に向かっている」という意見もある。たとえば「来年には現在のラインアップのほとんどの乗用車の北米生産・販売を中止する」と発表しているフォードは、「今後4、5年でフォードが販売する乗用車のほとんどがEV(電気自動車)になる。環境問題には十分対応できている」とコメントした。

 一方で、排出ガス規制に対するタイムラインを撤廃する方針は最終的に顧客のためになる、と多くの自動車ディーラーは主張している。規制数値達成の目標年が設定されると、メーカーはそれに合わせるため開発を急ぐ。そのコストがクルマの価格に反映されるため、顧客にとって最善とはいえない、という理屈だ。したがって、「37mpgというのは現実的な数値だ」という。

 またEVに急激に切り替えても、現在の技術では1充電当たりの航続走行距離の長いモデルはそれなりに高額だ。3万ドル(約334万円)台で購入できるモデルは、航続距離が短くなるなどの制約がある。

アメリカの排出ガス規制は
世界の自動車市場に影響

トランプ大統領イラスト
イラスト:安田雅章

 こうした開発状況を踏まえた場合、「どのクルマを購入するのかは市場の動き、顧客のチョイスに任せるのが自然」という意見もある。高い金額を支払って1充電当たりの航続走行距離の長いモデルを購入するか、コストに見合う性能で妥協するか。すべてのEVが1回の充電で300マイル(約480km)以上の走行が可能になる技術を開発するにはまだまだ時間がかかる。EV導入を急ぐより、技術開発を待ちながらゆっくりとエネルギーシフトを進めたほうが、結局は顧客のためになる、という考え方だ。

 トランプ政権が既存の法を改案するには今後数ヵ月の時間を要し、公聴期間も設定される。すでに環境保護団体からはこの法案が現行法を“改悪”するなら政権を訴える、という動きも見られる。アメリカの排出ガス規制は世界の自動車市場に影響を与えるだけに、今後の法案の行方が注目されている。

(報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)