実は、中央市民病院の救命救急センターについては、「断らない救急日本一」と認定されるたび、「医師を過労死させる気か」「こんな病院では働きたくない」といった中傷が、ネットの掲示板に多数寄せられていた。

「心身が弱っている時には、とてもネットを見る気になれません」と、有吉孝一救命救急センターは残念そうに語っていた。

 今回の報道で、風当たりは一層強くなるだろう。

 だが、「断らない救急日本一」は決して、医療従事者の犠牲の上に成り立っているのではない。また、一個の病院の努力だけで実現されているのでもない。

 このことだけは、どうか誤解しないでほしい。

「交代勤務制」により
時間外労働は70時間台

「断らない救急」に対して、医療者が中傷するのは、それがいかに難しいかを実感しているからでもある。

 救急患者のたらい回しが問題になっているが、「断りたくて断っているのではない。できることなら受け入れたい」と断腸の思いを口にする医師もいる。

 例えば千葉県では昨年8月から、搬送先が決まらない救急患者を必ず受け入れる病院を事前に千葉市内で3ヵ所指定し、代わりに経費を補助する事業を試行的に開始したが、対象病院からの「搬送件数の増加で負担が過大となり、参加を見直したい」との訴えで、中断を余儀なくされた。

 一般的なイメージだと、「大都市は医師も病院も多いので、救急車さえ来てくれればOK。田舎は医師が不足しているから大変」と思うだろうが、逆だ。

 救急車が現場に到着してから搬送先が決まるまでに要する時間が全国で最も長いのは東京都で、千葉県は2015年調査でワースト2だった。「断らない救急」は、大都市圏ほど難しい。

 そんな中で中央市民病院は、大都市・神戸で「断らない」を理念に掲げ、365日、24時間、患者を受け入れてきた。筆者は今年5月、同院を訪れ、有吉センター長ら医師だけでなく、薬剤師や放射線技師など、50人近いスタッフに取材した。

「17年度は、神戸市の救急患者の25%にあたる3万5244人の救急患者を受け入れました。消防局の受け入れ要請に対する今年4月の『応需率』は99.6%でした。神戸市内の病院の平均は79.3%です」(有吉センター長)