その上で、実際には、デフレとの戦いからの退却だが、転進と言い換えることができるような政策変更を織り込んでいく。

「新しい枠組み」ではイールドカーブコントロールを導入して、政策目標を量(マネタリーベースと日銀保有長期国債残高)から金利(イールドカーブ)に変更(つまり転進)するということにした。

 そうすれば、量の増加ペースはもはや目標ではないので、ペースが落ちても退却ではなく、出口に向かっているわけでもなくなる。

 しかし、同じことを目指していても、これを「マネタリーベースと日銀保有長期国債残高の増加ペースを低下させる政策変更です」と正直に言ってしまうと大変だ。それは、政府・日銀の共同声明に反することであり、デフレとの戦いから退却することを意味するからだ。

政策修正の「内なる思い」
消費税増税後に「次の一手」

 こうしたこれまでの日銀の苦しい胸の内を忖度すれば、7月31日に発表された「強力な金融緩和継続のための枠組み強化(以下、「枠組み強化」)」も理解しやすい。

 そこには、デフレと戦うのだという日銀の表向きのメッセージとこの戦争を終わらせたいという内なる思いが込められている。

 以下、「表向きのメッセージ」と、そこから「内なる思い」を“忖度”してみる。

 ▽メッセージ1:来年10月の消費税率引き上げまで政策変更は考えていません。これからもデフレとの戦いを続けるので安心してください。

「枠組み強化」ではまず、「政策金利のフォワードガイダンス」が示された。その内容は、消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」というものだ。

 デフレと戦っているというポーズを示すものだが、消費税率引き上げまでの間は政策金利や10年国債金利の誘導目標の変更を伴うような大きな政策変更は行いません、ということだろう。

「現在のきわめて低い長短金利の水準」というのは幅広く解釈できる表現だが、次に述べる10年金利の0.2%までの上昇も含めると考えられる。

 もっとも、「オーバーシュート型コミットメント」のように、物価目標と結び付けて具体的な政策をコミットしたわけではない。この緩い縛りに、リフレ派の2人の審議委員が反対したのは致し方ないところか。

 そして、このメッセージの背後にある内なる思いは、「消費税率引き上げが無事に終われば、デフレ戦争を終わらせるための次の一手を打ち出していく」と読める。