日立がテレビの国内販売から撤退
でも、なぜソニーのテレビを売るのか
日立製作所がテレビの国内販売から撤退することを発表した。2012年以降、自社では生産しないOEMの形で「Wooo」ブランドのテレビを販売していたのだが、それをついにやめてしまうという決断を下したのだ。
日立によれば、2017年度のテレビ販売台数は127万台ということだが、このうち今回撤退する国内のテレビ販売は7万台程度だと見られている。その数字の小ささを考えると、撤退は妥当な経営判断だと思われる。
ただし、今回の撤退のニュースには異例の発表が伴った。撤退したテレビについて、日立の販売店では今後、ソニーのテレビを販売するというのである。主力家電製品を自社ブランドではなく、ライバル会社の製品に代えてしまうというのは、これまでの家電業界の常識としては異例である。
日立が他社の製品を売るというのは、前例がないわけではない。1990年代、ソニーとパナソニックがゲーム機市場に参入した際には、日立はセガと提携してセガサターンのOEM機種を日立チェーンストールで販売している。本体の色がセガの商品と若干違うだけで、発売した商品はセガ商品とまったく同じ中身である。
ゲーム機の開発ノウハウは持っていないので、成長市場の商品を扱うにあたり、そのまま他社商品を導入するのは妥当な判断だと思う。しかし、それでも商品名は「ハイサターン」にして、あくまで日立の製品であるというスタンスを崩さなかった。
ところがこれから先、日立の店で販売されるテレビは、ソニーの「ブラビア」という他社の主力ブランドの名前のままになる。その観点から、今回の日立の決断は画期的だと言われるのだ。
しかしなぜ、日立はこのような経営判断をしたのだろうか。同社は中期経営計画で売り上げ10兆円、営業利益率8%を目指している。そうした方針に沿って、利益率が5%に満たない事業は再編の対象としている。家電の利益率は4.6%なので、このままでは再編の対象になるということだ。
これが欧米の大企業であれば、そのまま家電部門を売却するという経営判断になるだろう。成長性が著しい新興国市場を考えれば、日立ブランドの家電は中国の新興家電メーカーにとっては魅力的である。同じような判断から、三洋ブランドは中国のハイアールに、シャープは会社をまるごと台湾のホンハイに、東芝は白物家電をマイディアグループ、テレビをハイセンスにというように、ソニー、パナソニックに続く3番手以下の日の丸家電の多くは、中国や台湾系の家電メーカーに売却されてしまった。