タワーマンションの修繕は
さらに難題が山積み

 横浜市立大学の齊藤広子教授は「マンションの空き家率は10%未満なら管理組合の対応で何とか問題を表面化しないで進められるが、10%を超えると日常的に管理組合運営が困難となり、20%を超えると長期的な展望も、それに向けた取り組みも難しくなり、負のスパイラルに陥りやすくなる。さらに空き家化が大幅に進むとエレベーターが止まり、ガス・電気・水道も止まり、居住が困難となり、自力での再生は難しくなる」と警鐘を鳴らしている。

 国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によれば、建物の階数や規模などによりばらつきはあるものの、15階建て・5000平方メートル未満のマンションの場合、専有面積平方メートルあたり218円を、修繕積立金の平均的な目安としている。5000~1万平方メートル未満なら202円、1万平方メートル以上なら178円程度が目安となる。ざっと平方メートルあたり200円として計算すると、例えば70平方メートルのマンションなら適正な毎月修繕積立金額は1万4000円。この水準の積立金を入居直後から続けていれば、おおむね問題ないでしょうというわけだ。

 しかしこの水準も、消費増税は織り込んでいないほか、昨今高騰している建築費水準も計算には入れていない。大規模修繕費用は金融機関からの借り入れを伴うケースも多いが、やがては現行の金利水準も切り上がるだろう。大半のマンションは、こうした条件を十分に勘案した積み立てができていない。それらは廃虚予備軍と言っていいだろう。

 ましてやタワーマンションは、足場を組んで外壁の修繕が行えないため、ゴンドラなどによる高所作業だ。一般的なマンションに比して作業性は落ち、基本的に風速10メートルを超えると作業は中止となる。従って、工期は長めで非常にコスト高なのだ。

 加えてタワーマンションは、エレベーターや階段など共用部分の面積比が大きく、コンシェルジュサービスやラウンジ、スポーツジムなどのサービスもあるから、管理費もただでさえ高め。所有者にとっては二重苦である。

 とあるタワーマンションの大規模修繕は2年10ヵ月かかり、総額は6億円以上だった。また、設置されている高速エレベーターなどの設備は、世界に1つしかない特注品で非常に高額であることが多く、相見積もりが取れず、修繕や交換には莫大なコストがかかる。そもそもエレベーターや情報通信機器など技術進化の激しい分野では、30年前と同じスペックのエレベーターに交換するとは考えにくく、コストは想定よりアップする可能性が高い。

 そうなると建物がどんどん劣化していくのに必要な修繕もままならず、建物が朽ちていくのを見届けるしかないといった「タワーマンションの廃虚化」が進むだろう。

 もちろん、そうならないためにきっちり対策をしている優良マンションもある。都心湾岸地区や武蔵小杉に林立するタワーマンション群では、持続可能なマンションと、廃虚となっていくマンションの二極化が始まるのだ。