18年度に10%値下げ
泣く子も黙る壮絶な調達交渉

 今造は、昨年、香川県丸亀市に国内で17年ぶりとなる新設ドックまで完成させてしまった。西条工場(愛媛県西条市)と合わせて大型船を年間10隻も建造できる体制を整えた今造の鼻息は荒い。

 これまでも、弱体化した造船所を次々と子会社化。ただ傘下に収めるだけではなく、工場のバージョンアップを図るとともに、効率化も追求してきた。例えば国内10カ所の造船所には、それぞれ得意な種類の船をひたすら造らせて習熟度をアップさせた。また、類似の船を造る造船所同士には作業工程数の減少などを促し、互いに競争心を煽っている。

 そして今造最大のすごみ、それは調達力にある。実は船のコストは、その6割方を鋼材などの資材費が占める。重工系がオーナー系に劣る理由として人件費の高さが取り沙汰されるが、人件費はコストの約3割にすぎない。むしろ、重要なのは調達力なのだ。

 国内首位の今造の建造量は、三菱重工の約6倍もある(図「日本の造船会社の建造量の比較」参照)。その規模の差もさることながら、調達交渉の“壮絶さ”は比べものにならない。

 まず、相手に隙を与えない。交渉内容についてはその場で「MEMORANDUM OF DISCUSSION」と銘打たれた議事録にして記録を取る。たとえ、それが3行で終わるような簡易な会話であったとしてもだ。

 その日のうちに全社の調達部隊で議事録を共有し、次回の折衝の糸口を探り交渉を進めていくというから恐ろしい。おまけに、取引先は議事録に署名まで求められるので「言った言わない」で交渉をうやむやにすることもできない。

 価格にしても、これまでの実績とともに今造側から今後の“依頼額”が提示される。「ちょっと最近、市況が悪くて……」などと曖昧に逃げようとしても無駄だ。今造は、トヨタ自動車など異業種の調達価格まで把握していたりするのだ。

 わずか年間数万円の値下げでも、今造は相手が要求をのむまで何度でも交渉する。とりわけ17年度から18年度にかけての価格交渉はとてつもなくシビアである。

 「冗談かと思いましたよ」(今造取引先首脳)。16年の秋口のことだ。今造の取引先の間で驚きの情報が飛び交った。今造が17年度に16年度比5%、18年度には同10%の値下げを要求するというのだ。