仙台市宮城野区の交番で9月19日未明、当直(夜勤)だった巡査長が大学生の男に刃物で襲撃され、殺害される事件が発生した。事件から10日が経過し、当時の状況や背景が少しずつ明らかになってきた。交番を巡っては警察官が襲われる事件が相次ぎ、6月にも富山市で交番所長が殺害されたばかり。いくら訓練を積んだ警察官でも、至近距離でいきなり襲われたら対処は困難だ。警察官の生命と地域の安全を守るため、再発防止に向けた有効な対策が急がれる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
拳銃強奪狙った計画的犯行か
「現金を拾った」。仙台市宮城野区の仙台東署東仙台交番に19日午前4時過ぎ、東北学院大3年、相沢悠太容疑者(21)が訪れた。交番には4人がおり、2人が仮眠中だったため、清野裕彰巡査長(33)と同僚の巡査部長が対応した。拾得物は通常1人で手続きするため、巡査部長は奥の部屋に移動。その後、言い争うような声を聞きつけ戻ったところ、2人が倒れていた。
直後、相沢容疑者が突然起き上がる。包丁とモデルガンを持って襲い掛かろうとしたため、巡査部長が拳銃を構えて「刃物を捨てろ」と警告。それでも向かってきたため1発を発射し、それでも怯む気配がなかったためさらに2発を発射した。数分後に機動捜査隊が到着し、2人はいずれも意識がない状態だったという。
相沢容疑者は3発とも被弾し、左肺損傷による失血死。清野巡査長の致命傷は心臓に達した左脇腹からの刺創で、死因は失血死だった。
相沢容疑者は凶器となった包丁のほか、ナイフ2本とエアガン、工具を所持。清野巡査長の顔は赤く腫れ上がり、床にプラスチック製BB弾数十発が散乱していたことから、相沢容疑者はエアガンと包丁で清野巡査長を背後から襲い、包丁で頭や腹、背中など数ヵ所を執拗(しつよう)に刺したとみられる。
相沢容疑者は物静かな性格で、ふだんは問題となるような行動はみられなかった。交番や警察官とのトラブルなども確認されておらず、動機を記したメモなども残されていない。