産官学の危機感は薄いまま
とばっちりを食うのは一般市民

 しかし、リアルタイム情報の取得や配信には新たな設備投資が必要となるため、環境が整うにはまだ時間がかかりそうだ。IT事業者側は、この状況を突破するには官による鉄道事業者への働きかけが不可欠とみているが、具体的な動きは見えない。結局、各プレーヤーは2020年を特別な区切りとは位置付けずに、できる範囲で協力していきたいというスタンスにならざるを得ない。

 大会まであと2年を切っているなか、こんな悠長なことでいいのだろうか?

 今注目されているオリンピックにまつわる話題といえば、酷暑やボランティア問題など選手、スタッフ、観客に関する問題が中心だ。しかし、最も多数を占め、最も影響を受けるのは、首都圏で生活する一般市民である。

 今年に入って、オリンピック期間中のネット通販の自粛要請や、競技スケジュールの発表を受けた具体的な混雑予想が話題になったものの、大会期間中の日常生活がどうなるのか具体的なイメージは共有されていない。酷暑問題から降って湧いたサマータイム導入論は、オリンピックのために強いられる負担が分かりやすく共有されたことで「炎上」に終わったが、交通問題については、まだそれほどの関心を集めているとは言い難い。

 組織委員会は、企業や個人に広く少しずつ協力をお願いしたいというスタンスを示しているが、最大の問題は、大会まで2年を切ったにもかかわらず、誰がどの程度協力すれば問題を解決できるのか、国民に対して具体的なメッセージは発せられていないことだ。

 今年8月に組織委員会は、交通需要の抑制を推進する「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」を結成した。そこに記されたスケジュールには、一般市民への呼びかけは2019年の夏以降に着手するとある。

 大会前最後の夏が過ぎてから呼び掛けて、本当に間に合うのか。残された時間は、既に少なくなっている。