2020年に開催される東京オリンピックを巡って、ピーク時に鉄道の輸送力が不足するのではないかと懸念されている。1964年の前回大会を振り返ると、輸送力不足は何とかクリア。代わりに当時、鉄道事業者が四苦八苦したのは「外国人」であった。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

2020年、酷暑の東京に押し寄せる
780万人もの観戦客

1964年東京オリンピック時は輸送力強化のため鉄道事業者は踏ん張った
1964年、オリンピックに合わせて整備された東海道新幹線。新幹線や東京モノレールのみならず、都内在来線でも押し寄せる観客、特に外国人対策に大わらわだった Photo:Mondadori/AFLO

 2020年の東京オリンピックまで、いよいよ2年を切った。新国立競技場をはじめとする大会施設の工事が進み、徐々に形になっていく一方で、「学徒動員」と揶揄されるボランティア頼みの大会運営や、サマータイム導入論にまで飛び火した暑さ対策など、運営準備は迷走中だ。

 その中でも、私たちの日常生活に大きな影響を及ぼしかねないと懸念されているのが輸送問題である。大会期間中に競技会場を訪れる観客の総数は780万人。組織委員会は観客輸送を「高密度かつ信頼性の高い」鉄道をはじめとする公共交通機関で行うとしているが、中央大学理工学部の田口東教授の試算によると、通勤通学のラッシュのピークと観戦客輸送のピークが重なった場合、会場最寄り駅や乗換駅が乗客であふれ、列車の運行が停止する可能性も否定できないという。

 安全で円滑な観客輸送を実現するためには、鉄道事業者による輸送力の増強と、不慣れな国内外利用者への案内強化が不可欠となる。

 実は、こうした課題は、前回1964年の東京オリンピックでも同様であった。敗戦国日本が世界の表舞台へ復帰するお披露目式と位置付けられ、戦後日本が初めて迎える国際的大イベントでもあったオリンピックに、鉄道事業者はどう立ち向かったのだろうか。

 1964年大会では競技場の多くは、メインスタジアムである国立競技場を擁する神宮外苑周辺、選手村や代々木競技場のある明治神宮周辺、駒沢オリンピック公園の3ヵ所に集中していた。中でもとりわけ、国立競技場周辺が問題視された。規模、輸送の方向、開催時間などの条件によって、もっともひどい混雑が予想されたからだ。

 輸送の主力となるのは、国鉄中央・総武線と、営団地下鉄銀座線。オリンピックの交通インフラ整備というと、どうしても東海道新幹線や東京モノレールが語られがちだが、これらの都心の既存路線でも、さまざまな輸送力増強・混雑緩和の措置がとられた。