確かに、空欄に「2ケタ入りますね」とは、鈴木社長に電話で言いましたが、金額は両者が納得した上で決めること。具体的に10億円以上を求めたわけではありません。確約書のスキームが実行されれば、鈴木社長は捏造により不正に手にした株の約半分(時価総額1000億円前後)をポーラ伝統文化財団に寄付します。故・常司会長の意向に沿うことなので、そのように私は提案したわけです。

 その寄付が非課税でできなければ数百億円単位の課税負担が鈴木社長に生じます。一方国税庁から非課税処置を獲得するには、人材を配置したり公益財団にふさわしい事業を新たに立ち上げたりと大変手間が掛かる作業が必要です。財団法人の業務に詳しく、確約書の見届け人でもある私がそれらをしなければなりません。つまり求めたお金は結果として、私が鈴木社長の財産保全に尽力する対価です。これまでも私はポーラグループのリスク管理業務のコンサルタント料として会社から億円単位の報酬を頂いてきた実績もあります。

――確約書では、告発したHD元ナンバー2自身を後継社長にすることも書かれています。捏造を否定する鈴木社長はその点と前述のお金の件を特に非難して、「不当な要求をされた」と言っているわけですが、なぜ後継社長の条項があったのですか。

 私が自分の人脈を使ってHD役員や従業員からヒアリングしたところ、告発者には人望があり、かつて社内ナンバー2のHD常務取締役を務めたことからも明らかなように相当な力量が認められました。本人も会社を良くしていく覚悟を示したので、事態を収拾していくうえでも一番良いと判断したわけです。

――捏造が事実なら株と美術品が遺産相続対象から外れ、故・常司会長の妻、千壽氏がその4分の3(法定相続分)を得る機会を失っていたわけです。告発を機に「千壽氏VS鈴木社長ら」の遺産相続裁判の第2ラウンド(第1ラウンドは01~05年)が今年5月に始まりました。訴額(訴えで主張する利益を金銭で見積もった額)約1640億円の巨額遺産裁判です。

 17年前の私は、千壽氏を含めた複数の法定相続人に美術品を散逸させないことが、すなわちポーラ美術振興財団のためだという思いで捏造に関与しました。今は申し訳ない気持ちでいっぱいです。

――ところで今回の件で、HD傘下の社員からは何か話は聞いていますか。

 社員は裏でこそこそ、「こんな記事が出ているよ」と雑誌を回し読みしたり、「ドラマみたいな話がわが社にもあるんだね」とうわさしたりしているそうです。ただ大塚家具やロッテのお家騒動ほどは報道が過熱していないので、「うちは化粧品の広告を出して、マスコミを黙らせているんだよ」、なんて社員同士で笑っているとか。

「どこかで気にはしている。だけど根本的に鈴木家の中の話。会社の利益に響かなければいい」という冷めた声も聞きましたね。

――鈴木社長に言いたいことはありますか

 昨年末の確約書は鈴木社長の依頼に基づき作成したものですが、一部は鈴木社長の想定にないことも入っていたようです。(*鈴木社長は「説明に曖昧な点があったので告発者の要求事項を書面にまとめて示すように伝えた」と主張)。ただ、それをもって恐喝、強要されているというのは自らの過去の不正の事実に触れさせないよう、被害者を自作自演しているに過ぎません。鈴木社長がこうした嘘を嘘で固めるやり方をしていることは、今後の裁判で明らかになっていくでしょう。