段階的に税額が上がるというのは、従来のたばこ増税にはなかった仕組みだ。これまでは毎年のようにたばこ増税の議論があり、上がるか否かで振り回されてきた。先が見通せるという点ではありがたいというのがメーカーの一致した見解である。

 もっとも、5年の期間が設けられたのは、「JTに対する“忖度”もある。5年もあるんだから十分だろうということだ」と財務省関係者は明かす。JT株の3分の1を保有する国の、加熱式たばこで出遅れたJTに対する思惑も絡んだ措置なのだ。

加熱式の値上げ 先陣はアイコスか
時期は来年以降?

 難しいのが増税のタイミングで、どのように値上げをするかだ。

 従来の紙巻きたばこの場合は、長い増税の歴史の中で、幾ら値上げしたらどれほど売り上げが減るかがほぼ分かるため、利益を同じ水準に保つための値上げのノウハウがある。

 だが、加熱式たばこは、今回が初めての増税だ。値上げによる影響は見積もりづらい。従価税が導入された今回の税制では、価格戦略が税額、ひいては正味の収益に大きな影響を及ぼすことにもなり、メーカーを悩ませている。

 値上げの先頭を切るとみられるのが、アイコスを持つフィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)だ。「最もシェアの高いPMIがいくら値上げするのかを見て、各社がそれに追従するのでは」とある業界関係者は読む。

 「今年は各社様子見で、値上げは消費増税も控える来年以降になるのではないか」(業界関係者)

 厳しいのがJTだ。各社の中で最も増税幅が大きく、収益の悪化を懸念する声もある。だが、ある競合メーカー幹部は、「JTのプルームテックは他社製品と比べて増税幅こそ大きいが、それでも税額は低い。設備投資に費用は掛かっているが粗利も大きく、収益に大きな影響はないだろう」とし、「そもそも増税負担を心配するほどまだ売れていない」と皮肉を込める。

 国から5年の“猶予”を与えられたJT。果たしてこれをどう逆襲に結び付けるか。