2017年の電撃的な社長交代から1年半。杉江俊彦社長は構造改革が想定以上に進捗していると胸を張るが、いわゆる販管費の総額はほぼ一定、高コスト体質がさして変わるわけではなさそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

「世界をときめかせる、もてなしの技」──。日本の百貨店の元祖である日本橋三越本店が10月24日、第1期のリニューアルオープンを迎える。

 各フロアには、婦人服や紳士服、宝飾品などカテゴリー別に接客のスペシャリスト「コンシェルジュ」が待機。インバウンド客よりも、同店の従来の顧客である国内富裕層を主なターゲットに据えた。一部のスタッフには電子端末を持たせ、顧客情報を共有して接客に生かせるようにする。

 運営する三越伊勢丹ホールディングス(HD)では、2017年3月に突如、大西洋前社長が事実上のクーデターで辞任。現社長の杉江俊彦氏が後継に就いた。

 大西氏の成長戦略を重視する路線を否定する杉江氏は、人員削減や店舗の統廃合などの構造改革を掲げる。9月26日に発表した伊勢丹府中店と相模原店、新潟三越の3店閉店も、もはや既定路線といえよう。

 日本橋三越本店は、比較的若い世代を意識して、文化や“コト消費”を重視していた大西社長時代の店のコンセプト「カルチャーリゾート百貨店」を否定して挑んだ、杉江体制では初の大型リニューアルとなる。

 だが杉江社長自身は、昨年11月の決算記者会見で、この100億円規模の一大事業について「投資に見合うコスト削減を課しており、(リニューアルが)失敗しても大丈夫なようにした」と発言。百貨店ビジネスそのものへの関心が高いとはいえない。やはり、主眼はリストラにあるようだ。

 その成果はいかほどのものなのだろうか。図1は、同社の業績の推移だ。大西前社長は、営業利益目標500億円を達成できず、他社の後塵を拝していたものの、赤字に陥ったわけではない。