5月の連休前後に、再び円高が進行している。ドル円相場は、一旦、2012年2月から超円高局面を脱却し、1ドル84円近くまで円安方向に振れた。このときは、日銀の金融緩和が成功したという見方が多かった。

 ところが、その後のドル円レートの推移は、3月半ばには円安の流れが止まって、4月にかけて1ドル80円の水準まで戻っていった。

 なぜ、円高の流れはこれほどまでに粘り強いのだろうか。日銀の追加緩和が小粒なわけではない。日本の貿易収支は、震災後の2011年春から赤字に転落し、相対的に円買いの圧力を弱めているはずだ。2011年後半の1ドル77円前後の円高は、輸出企業から見れば、行き過ぎの水準と感じられる。

経験則の確認

 相場変動には、しばしば説明できないパターンが確認されることがある。これをアノマリーと呼ぶ。通常、相場変動を合理的な理由で説明するときには、ファンダメンタルズ分析に基づく。

 一方、そうした理論的背景で説明できない経験的変動、あるいは季節的変動があるので、そうした動きを例外とみなしてアノマリーと呼ぶ。アノマリーは、皆がそのパターンを意識するから、自己実現的に起こるという見解もある。

 グラフでは、1月から12月まで1年間のドル円レートの推移を2009~2012年にかけて並べてみたものである(図表1)。ここでわかるのは、3~4月に円安方向に振れる傾向であることだ。6~11月にかけては、逆に円高方向に振れることが多い。

 なお、ここで掲示したグラフでは、2008年以前は除いている。調べてみると、2000~2008年にかけては、2002年を除いて、3~4月に円安に振れるパターンにはなっていない。リーマンショック後の2009年以降に、季節的に春に円安に振れ、夏から秋に円高に向かうというアノマリーが成り立っている。