社内イベントはモラル違反?
日本企業を覆うパワハラリスク

パワハラへの過敏な気遣いで閉塞する日本企業の行き着く先とはシンガポールのセントーサ島に建つ巨大マーライオン前にて。日本の社内イベントの縮小ぶりに驚きを禁じ得ない筆者

 先日、「楽天の幹部があえて大変な登山をする」という内容の記事を読んだ。

 その記事を読んだときは、「日本でも面白いモラルイベントをしているな」と思っただけだったが、後日こうした「会社による半強制イベント」が、日本の大手企業のなかで異質となってしまったらしいと聞き、驚いた。

 ちなみに「モラルイベント」とは、海外で仕事へのモチベーションを上げるために行われているイベントであり、クリスマスや年度初めに行なわれるイベントのような、全社員が参加するものとは一線を画す。シンガポールのマイクロソフトでは、モチベーション向上以外に「チームワーク向上」も目的にして、年に何度か行われている。

 筆者の部署で行われているモラルイベントを例に挙げると、「ペイント弾を使用したシューティングゲーム」「アスレチック」「クッキングクラス」などの皆で遊べるイベントの場合もあれば、普通に「ランチ会」の場合もある。いずれにしても、チームワークの向上を目的としたイベントが選ばれる傾向にある。

 話を戻そう。筆者が驚いたのは、日本では時折「中小企業の運動会・社員旅行の復活」に関するニュースがある一方で、大企業では忘年会以外のイベントがほぼ皆無になってしまったと耳にすることだ。

「会社主催のイベントは勤務時間外における束縛ではないか?」「参加しなければ査定に響くかもしれないと心配させること自体がパワハラなのでは?」といった社員の声も最近は多く、会社のイベントが場合によってはパワハラに繋がり、コンプライアンス違反に当たるかららしい。

 シンガポールでは、年に数度部署ごとに行なわれる「モラルイベント」の他に、会社全体で行われる「ダンス&ディナー」(年末に行われる忘年会のような会。ダンスと冠しているが踊らないことも多々ある)や会計年度初めの決起集会にあたる「キックオフ」、さらに会社の社会貢献の一環として企画されるボランティア活動など、とにかくイベントが多い。日本では忘年会以外のイベントがないという事実に、筆者は驚きを隠しえない。