100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に需要が殺到し、発売即、続々と異例の大重版が決まっている。
本記事では、「常識はずれ」なクレーマーへの賢い対処法を、事例とともに特別掲載する。(構成:今野良介)
やるべきことをやったら、あとは「放置」しかない
モンスタークレーマーを撃退する方法は極めてシンプルです。
過剰要求に対しては「ギブアップ」して(相手の言いなりになるという意味ではなく、相手の土俵に上がらないこと)、不当要求はきっぱり断ればいい。この一本道をまっすぐに進めば、確実に終わりがきます。
そして、最後のステージが「放置」です。組織として打つべき手をすべて打ったら、あとはクレームが収束するまでアクションを起こさず、相手が諦めて引き下がるのを待てばいいのです。
この「踏ん切り」がなかなかつかない人が非常に多いのですが、放置してもいいとわかれば、クレーム対応はぐっとラクになるはずです。
たとえば、自社商品に欠陥などがあって、「3倍返し」(商品価格の3倍の金額で補償すること)などで誠意をもって謝罪したとしましょう。しかし、相手はそれで納得せず、「詫び状を出せ」「迷惑料を払え」などと要求をエスカレートさせてくることもあるでしょう。
そんなときは、「恐れ入りますが、ご要望にはお応えできません」と回答して、あとは何も取り合わないようにします。
「ギブアップ」しても妥協できなければ放置
「放置」は、ほとんどあらゆる場面のクレーム対応に活用できる最終手段です。
たとえば、常識では考えられないような独特の感性で苦情を訴える「天然クレーマー」に担当者が頭を抱えることもありますが、最終的には「放置」で終結させることがほとんどです。
たとえば、過去にこんなことがありました。
--------大衆食堂の事例---------
午後1時過ぎ、大衆食堂の店内で、ハエを見つけて大騒ぎする男性がいた。
「ハエが飛んでいる! 早く、なんとかしてくれ。気持ちが悪い!」
たしかに、2匹の小さなハエが、男性のテーブルから10メートルほど離れた壁に止まっていた。男性は「ハエは飛びながらでも卵を産み落とす」と主張する。
「飛びながら卵を産むなんて、そんなことあるんですか?」
店員が思わず尋ねると、鋭い目つきでにらみつけた。
「君は本当にそう言い切れるのか? 飛翔しながら産卵する種類もいるんだ!」と怒鳴った。
(了)
男性の主張は、学術的には間違っていませんでした。とはいえ、店側としては、どのような対応をすればいいのでしょうか?
「ほかにお客がいるのに殺虫剤をまくわけにはいかない」と説明したうえで、料理をつくり直すか、代金をいただかないというのが妥当な対応でしょう。
つまり、「ギブアップ」して妥協点を見出すことができなければ、あとは放置するしかないわけです。
「謝って済む問題」にできなければ放置
ペットブームを反映して、ペットフードへの異物混入や成分表示に関する問い合わせや苦情が急増している中で、こんなクレームも登場しています。