「さっき、マクドナルドにいた女子高生が言ってたんだけど……」。SNSを使っていると、こんなテンプレート的な書き出しから始まる“うまいこと言った話”をよく見かける。実在するのか疑わしい“マックの女子高生たち”の鋭い会話を、「現代落語のようだ」という人もいる。しかし、実際に街中でびっくりするような話を聞いてしまったという場合もあるのではないか。今回は、日常で小耳にはさんでしまった驚きの話を紹介していきたい。(取材・文/フリーライター むらたえりか)※文中の登場人物はすべて仮名
スポーツ界のハラスメントが話題
「必要な暴力」はない
「私たちのころは、部活動でよく殴られて流血したりよくあったけど、卒業してから、あれは必要な指導だったと思うんだよね」
これは、ある女性が聞いて驚いたという、カフェで隣になった女性たちの会話の一部だ。今年は、スポーツ業界のパワーハラスメント(パワハラ)や暴力を用いた指導の問題が何度もニュースになった。これまでのニュースや議論によって、世間的にも「パワハラによる指導は、指導とは言えない」、「暴力は指導ではなく、恐怖で支配しているだけ」という認識が広まり、定着しつつある。パワハラや暴力によって苦しんでいる若い選手たちの姿を見て、心を痛めた人も多いことだろう。
しかし、そんな風潮の中でもいまだに「パワハラ、暴力は必要だ」という声もある。実際に、学生だったころに部活で暴力的な指導を受けていた人から、そうした声が上がることもある。すると、「ほら、やっぱり暴力は効果があったじゃないか」と同調する人が出てくる。
1981年からアメリカで、子ども虐待、女性への暴力防止にかかわる専門職の養成に携わっている森田ゆり氏は、著書『しつけと体罰』(童話館出版/2003)、『虐待・親にもケアを』(築地書館/2018)の中で、指導におけるハラスメント(=暴力・体罰)の問題性をはっきりと指摘している。