フェルメールの絵に隠されたメッセージ

 上品なイメージのあるヨハネス・フェルメールの風俗画も、実は純潔を捨てようとする女性や、恋煩い中の一家の主婦、そして楽器を演奏する姿(性行為を示唆している)などを描いています。

 フェルメールが描いた風俗画『水差しを持つ女』では、水差しの水を外に捨てようとする女性の姿が描かれています。一見すると日常の何気ない風景ですが、「水差し」は純潔を表すものであり、まさに今、純潔を捨てようとしている女性の姿を描いているのです。

ヨハネス・フェルメール『水差しを持つ女』1662年頃、46×41cm、メトロポリタン美術館

 また、『紳士とワインを飲む女』も、一見すると日常の一コマですが、手前の椅子には「性行為」を示唆する楽器が置かれており、男性からワインを勧められている女性が見つめるその先には、ステンドグラスに「節制」を象徴する馬勒(ばろく)を持つ女性が描かれています。こうして、さりげなく肉欲への戒めを伝えているのです。

ヨハネス・フェルメール『紳士とワインを飲む女』1658~60年、66×76.5cm、ベルリン絵画館

 フェルメールと同じ時代に活躍したオランダ人画家ヤン・ステーン(1626頃~79年)も、子どものしつけよりも目の前の酒に興味がある怠惰な母親や、恋煩いから診療を受ける女性、そしてだらしなく脱がれた靴から性的に奔放であることを示唆する女性が身づくろいする姿など、「お手本」にならない人々の姿をユーモラスに描いています。

 一方で17世紀後半になると、子育てする母親や子どもを看病する場面といった、女性の美徳を表す風俗画がオランダで流行します。フェルメールが真面目にレースを編むことに熱中する女性の姿を描いているのもそのひとつです。

 プロテスタント中心の市民社会を樹立したオランダらしく、手紙を書いたり読んだりしている場面も多く描かれました。カトリック教徒と違い、プロテスタントは母国語で聖書を読んだため識字率も高く、コミュニケーションのツールとして手紙が一般化していたのでした。