マーケターとして働く「場」には、事業会社と外部支援会社の大きく2つがあります。それぞれの仕事の特徴と報酬の傾向とは? マーケティングの仕事との実態とマーケターとしてのキャリア構築のポイントをまとめた『マーケティングの仕事と年収のリアル』からご紹介していきます。

 マーケティング業務の担い手には、企業内の多くの部門にまたがるほか、外部の支援会社もあります。そうした「働く場」を俯瞰して、もう一度ここで整理しておきます。

マーケターが働く「場」としての事業会社と外部支援会社、仕事と報酬レベルはどう違う?

 マーケティング業務で働く「場」には、大きく2つあります。個人向け・企業向けを問わず商品・サービスの製造・販売を生業とする事業会社と、それらの事業会社にマーケティング支援のサービスやITシステムを提供する外部支援会社(以下、支援会社と表記)に分けられます。

 前者の事業会社には、外資系大手のコカ・コーラ(飲料)、P&G(日用品)、マクドナルド(外食)といった小売り・サービスの会社のほか、トヨタ(自動車)や三菱UFJ銀行(金融サービス)、村田製作所(電子部品)といった、さまざまな業種の国内資本の大手企業が含まれます。

 後者の支援会社には電通などの大手広告代理店のほか、クラウドサービスを提供するセールスフォース・ドットコムアドビ、調査サービスを提供するマクロミル、PRサービスを提供するベクトル、デジタルマーケティングを支援するアイ・エム・ジェイ、最近では外資系コンサルティングファームもマーケティング支援サービスを強化しておりアクセンチュア・デジタルデロイトデジタルなど、細分化されたさまざまな専門支援サービス会社があります。

 詳細は新刊『マーケティングの仕事と年収のリアル』をぜひご覧いただきたいのですが、同じ事業会社で比較した場合、外資系より国内資本の大手企業のほうが、マーケティング職が専門職キャリアとして評価されづらい場合が多いようです。

 一方で、国内事業会社で働くメリットには、手厚く守られた雇用環境があります。いまどき大手事業会社も安泰ではないという見方はその通りですが、よほどのことがないとクビにはなりません。一般的には中小規模が多い支援会社のほうが業績の変動は激しく、大手事業会社のほうが安定していることが多いといえます。

 もちろん事業会社も、報酬面は千差万別です。テレビ局のように平均年収が高く1000万円を大きく超える会社もあれば、飲食サービス業のように、大手でも収益構造として平均年収を高めにくい業種も混在しています。ちなみに、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、社員1000人以上の大企業の部長の平均年収は1200万円以上ですが、社員1000人未満の企業の部長の平均になると800万円を割り込み、企業規模によって1・5倍以上の格差があります。

 次に、支援会社の傾向です。

 常にクライアント企業から、対価にふさわしい成果を出しているか、シビアに評価される環境が特徴です。基準に達していなければ取引が打ち切られるため緊張感は高く、その環境下で専門業務を繰り返すため、領域は狭くとも専門スキルが身につくのは早い傾向にあります。

 評価・処遇の面では、大手広告代理店を除くと、これも千差万別です。収益性の高い企業であれば、現場のエースと呼べるようなマネジャークラスで年収700万~1000万円に達する会社もあります。逆に、上場している規模の会社の営業部長クラスでも年収1000万円に満たない場合もあり、支援会社は処遇面で非常にばらつきが大きいのが実状です。

 中小規模の独立資本経営の会社になると、報酬面に関しては、売上高や組織の規模と比例せず、さらにばらつく印象です。高収益で年収が高めの会社もある一方で、昇給や昇格の仕組みが不明瞭な会社も多くなります。オーナー経営者の一存で若くして抜擢する会社や、評価ルールが明確であっても給与水準が全体的に低い会社も混在しています。

 ただ、若い人にとっては、社内の評価や昇進において年齢や経験の浅さがハンデとなりにくい点は、メリットといえます。いわゆる年功序列の順番待ちをすることなく、早く上位の役職業務の仕事を経験でき、昇給・昇格のペースが速くなる可能性もあります。大手企業と比べれば、20代後半~30代前半の若さで事業部長や取締役として経営に関わる機会は生まれやすく、人材の層の薄さがマイナスでもあるし、人によってはプラスになるのです。