「あんじん」な生き方
「大丈夫だよ 生きていけるよ」
この標語が掲げられたお寺は旧品川宿にあります。ご住職は「掛けかえると、門徒さんから戻してくれと言われてしまい、10年以上掛けかえられない標語です。ある意味、お寺の標語になっています」とコメントされています。
確かに心の奥底が暖かくなる素晴らしい標語ですね。
最近、駅のホームで電車を待っていると、「人身事故」という表示を見ることが多く、その都度、気持ちが重たくなります。日常茶飯事のように、人が傷つき、亡くなってしまう。わたしも何度か事故現場に出くわしたことがありますが、自殺する方の多くは脳裏を何か嫌な記憶が横切ったりして、発作的に飛び込んだりするようです。特に月曜日は人身事故が増える傾向にあります。
「大丈夫だよ 生きていけるよ」
どんなに嫌なことがあっても、常にこの言葉が心の中にしっかりあれば、こうした命が失われることを防げるのではないでしょうか。
人はみな、多くの「不安」を抱えながら生きています。だから「安心」を求めます。仏教では安心と書いて「あんじん」と読みます。「あんしん」と「あんじん」は何が異なるのでしょうか。
それぞれの宗派によって「あんじん」の意味する内容は異なります。主に禅宗系などの宗派では修行によって得られる安定した心の境地、浄土教系の宗派では阿弥陀仏の救いを疑わず、浄土への往生を求めることを一般的に指します。
それらはわたしたちが求めている刹那的な「あんしん」とは異なり、永続的に心に影響を及ぼすものです。ですから、「あんしん」ではなく、仏教的な「あんじん」を求める生き方をしてみてはいかがでしょうか。
毎日がレボリューション
「諸行無常 人生は逆転だらけ」
こちらは東京原宿にある日蓮宗のお寺からの投稿です。「思い出してください。辛い状況、辛い気持ちも、ずっとは続かなかったはず。全ては移り変わります」とコメントされています。
「諸行無常」については以前も触れましたように、ネガティブなことばかりではありません。ずっと楽しいことが続かないことと同じように、ずっと辛いことや悲しいことも続かないのです。
その意味で、人生はまさに逆転の連続。Mr.Children(ミスターチルドレン)の「I’LL BE」という曲の中にも「何度へましたっていいさ 起死回生で毎日がレボリューション」とあります。
本当に疲れてしまったときはゆっくりと休んで、また逆転の機会をうかがいましょう。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)