限りない命とは
前回、「必ず人は死ぬ」と言っておいて、これはどういうことなのかとお叱りを受けそうですね。このセリフを覚えている方は、30代半ば以上だと思いますが、トレンディドラマ全盛期に放映された『101回目のプロポーズ』(1991年)で、主人公の武田鉄矢さんがトラックの前に立ちはだかり、そう叫んでいました。
恋人を再び失うことを恐れて、自分の気持ちを受け入れてくれないヒロインに、命がけで思いを伝えるという、その年の流行語大賞金賞に輝いた一言。脚本の野島伸司さんやこの標語を書かれたご住職の気持ちは分からないのですが、インパクトは実に大きかった。
そこで今回は、「いのち」ということを考えてみたいと思います。
『無量寿経』という仏典があります。浄土宗や浄土真宗にとっては「浄土三部経」と呼ばれる大切なお経の1つです。「無量寿(むりょうじゅ)」の無量は「量ることができない」という意味で、寿は「命」のことですから、直訳すると「限りない命」となります。
死では終わらない物語
「NEVER ENDの命たまわる南無阿弥陀仏」という標語もありました。
NEVER ENDというのは「終わりなき」ということですが、これは9月に引退コンサートを行った安室奈美恵さんのヒット曲だと思います。この曲は2000年夏に開かれた九州・沖縄サミットのためにつくられました。そういえば、今は見掛けない二千円札もこの時に発行されましたね。
「命たまわる南無阿弥陀仏」という言葉と、先ほどの「無量寿」という考え方には、阿弥陀仏に帰依すれば浄土に生まれ変わることができるという浄土教的な世界観が示されています。一度阿弥陀仏に出会ったら、私のいのちは終わりません。いのちは続いていくのです。
僧侶であり、宗教学者の釈徹宗さんは浄土教的な世界観を『死では終わらない物語』と本のタイトルで表現しておられましたが、みなさんも死では終わらない物語に触れてみてはいかがでしょうか。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)