『週刊ダイヤモンド』11月3日号の第1特集は、「投資に役立つ地政学・世界史」特集です。今、世界は米中貿易摩擦の激化などで混迷の度合いを深めています。本特集では、国際政治学者で、ユーラシアグループ社長兼CEOのイアン・ブレマー氏に、地政学的なディプレッション(恐慌)の可能性を始め、米中や日米関係などについて話を聞きました。その内容を特別にダイヤモンド・オンラインで公開します。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 麻生祐司)
イアン・ブレマー氏
1969年11月生まれ。米国の政治学者。スタンフォード大学にて博士号(旧ソ連研究)取得。フーバー研究所のナショナルフェローに最年少の25歳で就任。28歳で調査研究・コンサルティング会社、ユーラシアグループ設立 Photo by Yoshihisa Wada

──市場の変動と地政学リスクは必ずしも連動していませんが、これだけ地政学リスクが高まると、市場が危機的な状態に陥ることもあり得るのではないでしょうか。

 そうは思いません。市場は短期的であるのに対し、地政学は長期的だからです。IMF(国際通貨基金)は地政学的な状況を背景に、今年と来年の世界経済の成長率予想を3.7%に引き下げました。最近の地政学上の問題は悪いニュースばかりで、その全てが「Gゼロ」(リーダー役不在の世界)に関連しています。ただし、(危機的な状態に)なるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。

 経済的なリセッション(景気後退)は平均して7年置きに発生していますが、地政学的なリセッションはそう頻繁に起きるわけではないからです。ただ、今起きようとしているのは、地政学的なリセッションです。

──それは、ディプレッション(恐慌)に発展するのでしょうか。

 そこまでではありませんが、そうなる可能性はあります。2008年のリセッションのときは、世界の主要国が皆ディプレッションを回避するために、景気刺激策やインフラ整備などを行い、人々を落ち着かせようとしました。

 それから10年後の今、地政学的なリセッションに突入しています。戦争につながる可能性があるため憂慮すべき状況ですが、世界中の誰もがこの事態をどうやって避けるかに関心を持っていません。

──軍事的な意味での戦争ということですか。