軽減税率来年10月に消費税が10%に増税される。それに関して、国会で議論が盛んになってきたのが「軽減税率」。様々な懸念が指摘されているにもかかわらず、軽減税率はなぜ導入される方向で話が進んでいるのか Photo:PIXTA

不安が一人歩きする軽減税率
弱者にしわ寄せが行くのは本当か

 来年10月に消費税が10%に増税される。それに関して、国会で議論が盛んになってきたのが「軽減税率」である。様々な懸念が指摘されているにもかかわらず、導入される方向で話が進んでいるこの軽減税率とは、いったい何なのか。実際にはどのような問題があるのか。不安が一人歩きしている観のある「軽減税率」を、わかりやすく解説してみよう。

 消費税が10%に増税されると低所得層の生活が苦しくなるが、その痛みを和らげるために導入されるのが、軽減税率というものだ。要するに、生活に必要な飲食料品と新聞だけは、税率を8%のままで据え置こうという政策である。

 それで何が問題かというと、「本質的に考えると、結局のところ、低所得層の負担が逆に増えるのではないか」ということが懸念されているのだ。

 確かに、食料品だけでも税率が8%になると、低所得層の税負担はその分緩和される。しかし、食料品は高所得者層の方がたくさん購入しているので、実際の減税額は高所得者層の方が高額になるという、逆累進性の問題がまず発生する。

 次に、こちらの方がより問題なのだが、軽減税率のために税収が1兆円ほど減ることが見込まれている。財務省はそれを埋める財源を検討しなければいけなくなり、議論の末、弱者に実質的な負担を強いる方針が固まってしまった。

 具体的には、4000億円分は低所得者の医療や介護の負担を軽くする制度を見送り、3000億円は給与所得控除の縮小とたばこ増税で賄うことになった。2000億円は現在消費税が免税になっている中小の事業者に課税することで充てる。そして残り1000億円は、社会保障給付の見直しや効率化で捻出する。

 結局は、所得税や社会保障費のように消費者から見えにくいところに負担を付け替えるだけで、低所得者層の税負担は、実質的には緩和されるどころか悪化しそうな気配なのである。それが国会で問題視されているのだ。