ポスト資本主義社会
ダイヤモンド社刊
2000円(税別)

 「組織とは、共通の目的のために働く専門家からなる人間集団である」(『ポスト資本主義社会』)

 社会、コミュニティ、家族などの伝統的な社会集団と異なり、組織は目的をもって設計され、形成される。それは、人間の生物的必要や心理的特性に基づいて形成されるものではない。

 組織は、常にそれ自体が専門化した存在である。すべての組織が目的によって規定される。これに対し、社会、コミュニティ、家族は、言語、文化、歴史、地域など人を結び付ける絆によって規定される。

 いまやあらゆる先進社会が組織社会となった。すべてではないにしても、社会的な課題のほとんどが、組織によって遂行されている。

 組織が論じられるようになったのは第二次大戦後である。ドラッカーは、イギリスの権威ある辞書『コンサイス・オックスフォード』の1950年版にも、この言葉は、今日の意味では収載されていないという。

 政治学者や社会学者は、政府や企業、社会や部族、コミュニティや家族について論じる。しかし組織は、政治学、経済学、社会学の用語にはなっていない。

 「組織は、今日いまだに政治学者や社会学者が正常と見なしている諸々の前提には合致しない存在である。政治学者や社会学者が正常と見なしているのは、中央集権国家が支配する一元的な社会である。これに対し、すでに現実となっている組織社会は、限りなく多元的である」(『ポスト資本主義社会』)