soeasy社長の飯尾慶介氏飯尾慶介(soeasy社長) Photo by Kazutoshi Sumitomo

 2016年4月、soeasy社長の飯尾慶介はスマートフォンを手にしながら、SNS上を流れる熊本地震のニュースを眺めていた。

 そのニュースは、被災地で救援物資が必要としている人の所へなかなか届かないという内容だった。ただそのニュースに前後して、どこにでもあるものを代用して急場を凌ぐ“お役立ち動画”がシェアされていることに気付いた。

 例えば「新聞紙で作る即席スリッパ」。避難所になった体育館では、被災者だけではなく行政担当者やボランティアなど、大勢の人が出入りする。そのため、想像以上の埃が舞っているようだった。

 急ごしらえの避難所に、スリッパなどない。しかし、多くの被災者が水や食料などのライフラインの確保に四苦八苦する状況で、スリッパが欲しいなどとは言いにくい。そんな中で新聞紙の即席スリッパは、不自由な避難生活を、最小限のコストと手間で少しだけ豊かにする知恵として、被災者の間で重宝されていた。

 日本は地震や水害が毎年発生する災害大国。それにもかかわらず、こうした便利な知恵やノウハウはまったく蓄積されていなかった。

「ちょっとした工夫で生活が便利になる“おばあちゃんの知恵”は、日本中に眠っているはず。それに誰もが一つはそういう知恵を持っている」

 飯尾はそう考え、便利な生活の知恵を共有する動画投稿プラットフォームの事業化へ向けて、準備を進めることにした。