「高い障壁が立ちはだかっているのは事実」(丸紅幹部)

 丸紅は、米国の穀物3位のガビロン社の買収交渉を進めている。全株式を取得すれば、丸紅の年間穀物取扱量は4000万トン規模となり、世界首位の穀物メジャー、米カーギル社に並ぶ。かねて目指してきた、「和製穀物メジャー」の称号獲得に一気に手が届きそうだ。

 だが、朝田照男社長は意気揚々としながらも、不安を隠さない。「穀物に強みを持つ丸紅としてはまたとないチャンスだが、資金をどうするか」──。

 そもそも丸紅の新規投融資額は年間平均3000億円。金融機関などに出資を仰ぐ可能性もあるが、手中に収めるためには、「約3000億円は必要」(関係者)で、これだけで投資枠が埋まってしまう。他の成長分野に充てる投資余力がまるでなくなってしまうことが、経営陣の不安のタネなのだ。

 市場の見方も厳しい。買収金額が約3000億円となれば、丸紅の2012年3月期末の自己資本の33%に相当する。「収益が穀物価格に左右され、一極集中リスクが大き過ぎる」(市場関係者)というわけだ。

 現に、米S&P社は9日、「リスク量と自己資本のバランスが著しく悪化した場合には、信用格付けにマイナス影響が及ぶ可能性もある」と、格下げを示唆したほどだ。

 ただ、丸紅は収益性の低い事業を売却し、資金確保に向けて動くとみられている。着実に事業領域を拡大してきた穀物部隊は売上高を5年間で5倍に伸ばし、丸紅を世界6位にした実績がある。

 リスクを取ってでも戦略の実行に踏み込むか──。丸紅は失敗が許されない決断を迫られている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)

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