カナダを含む北米市場の2017年度の販売台数は約73万台。計107万台という世界全体の販売台数の実に7割弱を占める。その比率は07年度からほぼ倍増しており、この10年間で北米依存が相当強まったことがうかがえる(上図参照)。
北米で人気の理由の一つは、積雪地域のいわゆる「スノーベルト」で、スバルの特徴である四輪駆動(AWD)が広く受け入れられている点にある。
その一方で雪が降らない「サンベルト」での販売比率は低い。そのためスバルは南部の販売網をさらに拡充し、米国全体のシェアを現状の3.8%から5%まで引き上げる目標だ。
国内販売苦戦
フォレスター投入で難局打開なるか
だが、米国がこれまで同様にスバルの“ドル箱”であり続けるかには疑問符が付く。
スバルにとって最悪のシナリオは、トランプ大統領による自動車関税の引き上げだ。
スバルは米国販売台数のほぼ半数を米インディアナ州の工場(SIA)で生産し、残る半数を日本から輸出する。関税を現状の2.5%から25%に引き上げるトランプ砲が放たれれば、米国に生産拠点を持つライバルメーカーに価格競争で勝ち目はない。
かといって米国で生産を増やせば、日本国内の稼働率が下がる。「群馬でのサプライヤーを含めた操業や雇用の問題を考えると簡単に答えは出ない」(中村社長)というジレンマもある。
米国の関税引き上げはスバルにとって死活問題だが、特段の打開策があるわけではなく、まさにトランプ大統領に社運を握られているのが現状だ。
そもそも米国市場は近年、需要の伸びが頭打ちだ。供給過剰のため新車の“安売り”競争も激化する。スバルの販売奨励金も少しずつだが増えており、このまま価格競争に巻き込まれれば、これまでのような高収益は望めない。
こうした米国リスクを承知しているからこそ、中村社長は北米以外の「フロンティア」開拓に乗り出すことを強調する。
だが、事情は他の自動車メーカーも同じで、アジア市場はすでに激戦区となっている。その中でスバルの北米以外の具体的な戦略は見えてこない。