したがって、外国人の単純労働者受け入れの法案については、審議会レベルでまともに議論しなかったことを埋め合わせるためにも、国会審議で十分な時間をかけてしっかりと議論するようにすべきです。国論を二分しかねない問題だからこそ、反対派の存在と主張に配慮した対応が必要なのです。

 かつ、これまでの検討過程で専門家の知見が十分に反映されたのか疑わしいからこそ、国会で専門家や民間有識者に対する公聴会も通常以上に念入りに行ない、必要があれば柔軟かつ積極的に法案修正を行うことが必要ではないかと思います。

 一例を挙げると、移民制度に関する専門家によれば、海外では外国人の単純労働者の在留期間は1年や2年などの短期とし、その間に問題を起こさなかった場合は在留資格を更新できるようにしている国も多いそうです。外国人でも高度人材より単純労働者の方が犯罪などの問題を起こす可能性が高いからでは、とも思いましたが、それと比較すると、政府案の単純労働者の外国人も最初から5年間の在留資格というのは、期間が長すぎるのかもしれません。

安倍政権は“政策”と
“政治”のどちらを優先するのか

 もちろん、時間をかけて議論するとなると、今臨時国会で法案を成立させることは不可能になります。ただ、おそらく与党の側は、特に地方で人手不足が深刻な現実と、来年4月に地方統一選で7月に参院選という政治スケジュールの双方を踏まえて、今臨時国会での成立を目指していると思われます。

 そう考えると、与党が今回の法案についてどう対応するかは、政権与党が“政策”と“政治”のどちらを重視・優先するかについての格好の試金石となると言えます。その結果は見えている気もするのですが、とりあえずはしっかりと見届ける必要があると思います。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)