この枠を超えると追加関税が実施されることになるため、メキシコとカナダは事実上「輸出規制」を受けることになる。また米韓新FTAでも、韓国側が対米鉄鋼輸出を2015年〜17年の平均の7割に抑える合意がされた。

 ただ、メキシコやカナダからの輸出は各170万台程度で、輸出を規制するとしてもかなり“高い天井”だ。今の生産には実害はなく、一方でトランプ大統領も国内向けに輸入車の流入に「枠」をはめたと主張できるものになった。

 こうしたことから、日本も“輸出自主規制”を迫られるという見方もある。天井を高くすれば、日本企業には実害はない一方で、米国側も「成果」を誇示できるというわけだ。

 これに対して、かつて日米摩擦交渉にあたった経産省OBの1人は「すでに90年代半ばには、こうした管理貿易の手法はよくないということで、米国を始め多くの国が認識してWTO体制の下で自由貿易を推進しようということになった。時計の針を逆戻りさせるものだ」。

 だが問題は、「80年代の日米摩擦時代で頭が止まったまま」のトランプ大統領に、そうした理屈が通じるのかどうかだ。

農畜産品で「TPP超え」譲歩か
為替条項で揺さぶり

 もう1つの焦点が、米国が従来から求めている農畜産物の市場開放だ。

 首脳会談の共同声明で、日本として「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限」として、農畜産物についてもTPPの水準以上の市場開放はしないことが、一応、明記された。

 今年の年末にはTPPが発効し、来年になれば豪州などからの安い牛肉が日本に入ってくる。経産省の幹部は「不利な状況に置かれた米国の業界からの声も強まっているため、米国政府はTAGの合意を急いでおり、TPPと同じ水準で合意に応じるはず。米国だけが有利になるようなTPP以上の自由化は、日本側が統一地方選や参院選があり、とても飲めないことは米国も分かっているはず」と話す。

 しかし、「TPPは米国に不利。国益が反映されていない」とTPP離脱を決めたトランプ大統領が、それで妥協するのかどうか。

 日本側にも、妥協の糸口を探るかのような動きもなくはない。茂木敏充・経済再生相は10月16日の記者会見で、「全体的に最大限の譲歩はTPPだが、(品目ごとの最大は)それぞれ違う」と発言、場合によっては一部品目でTPP以上に譲歩する可能性に含みをもたせた。

 日本側には、一部の品目で「TPP超え」になった場合、それ以外の何らかの品目で「TPP以下」の水準にし、全体でならして「TPP並み」の自由化で収めたいという思惑が見え隠れする。

 実際、7月に署名した日欧経済連携協定(EPA)では、チーズなどの一部の品目について、TPPより自由化の水準が高いものがある。

 自動車・自動車部品への「25%追加関税」については、米国内でも自動車業界が、世界的なサプライチェーンの混乱や組み換えなどのコストを懸念して反対している。また、実施されれば輸入車価格がかなり値上がりすることになり、消費者の反発も強まると予想されている。