ソフトバンクPhoto:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 ソフトバンクグループは海外資産の買収に大枚をはたくことで知られている。だが国内の携帯子会社について投資家に同じように太っ腹になってもらおうとしても、説得するのは難しそうだ。

 ソフトバンクは12日、携帯子会社「ソフトバンク」新規株式公開(IPO)について、東京証券取引所の承認を得たと発表した。同社はソフトバンク株の37%近くを売却し、最大230億ドル(約2兆6000億円)の調達を目指す。調達資金は1000億ドル規模を誇る傘下のテクノロジーファンド「ビジョン・ファンド」を通じ、さらに多くのハイテク業界ユニコーン(評価額が10億ドル以上の新興企業)に投じられる可能性がある。

 だが、携帯子会社の評価額は630億ドル近くに達することになり、あまりに高額だ。NTTドコモやKDDIは、企業価値(EV)がEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)の平均5.2倍となっている。ソフトバンクにこの倍率をあてはめれば、同社の企業価値は520億ドル。純負債を差し引けば、時価総額は250億ドルに低下する。

 ソフトバンクは、投資利回りを渇望する日本の投資家を引き付けることで、より高いバリュエーションを達成したいと考えている。純利益の85%を配当に回す計画で、その比率は同業他社の40〜50%を大きく上回る。その結果、ソフトバンク株の配当利回りは5%超となり、ドコモやKDDIの4%強を上回る。

 ソフトバンクにとっては、そうした水準の配当を維持できるかどうかが課題となる。携帯電話サービス料金を巡る政府の圧力を受け、ドコモは2週間前、サービス料金を最大40%値下げする計画を発表。それ以降、日本では通信銘柄に売りが広がっている。ソフトバンクは他社の値下げに追随するとは発表していないが、孫正義氏は先週、通信事業の人員を4割削減することで値下げできると示唆した。言うまでもなく、それほど大規模なレイオフは一筋縄ではいかない。そうなれば、高額の配当計画を維持するのが難しくなるかもしれない。

 安定したインカムゲインを求める投資家は、ソフトバンクのIPOに飛びつくのを考え直した方がよさそうだ。