支店長が社長に打ち明けた
悩み、その中身は……

 翌日の午後、三田支店長の体調を心配し、本社に呼び出した丸山社長は、昨日の電話の内容について話し出した。三田支店長は最初、言い淀んでいたが、ポツリポツリと話し出した。

「四ツ谷課長はF支店での勤務年数が長くお山の大将的存在です、こちらから指示を出しても、課長は『そんなやり方じゃダメだ』と言って、否定します。時には大声で怒鳴ったりすることもあります。他の社員には『あいつ(支店長)の言うことは無視しろ!』と指示したのか、私が挨拶しても彼らは無視するのです。社長に心配かけてはいけないと思い黙っていました。すみません…」

 叔父としての贔屓目を差し引いても、三田支店長は真面目で責任感が強く、優秀な社員だ。異動前の支店では実績も築き、部下との関係も良好だったと聞いていただけに、丸山社長はショックだった。

 丸山社長は「事情はよくわかった。とにかく少し休みなさい。F支店には本社から伝える」と言うと、三田支店長をそのまま帰宅させた。

課長の行動とパワハラの
実態調査を開始

 丸山社長は知人の社労士に電話して経緯を伝えた。すると、社労士は「課長についてはパワハラ(注1)にあたる可能性がある」と言い、「部下や同僚からのパワハラも成立する」と指摘した。

「パワハラの実態調査と、課長の行動を調べた方がいい」とアドバイスを受けた丸山社長は早速、調査することにした。

 丸山社長が本社で保管している四ツ谷課長の日報とタイムカードを照合していた。すると朝はほぼ毎日、取引先との打ち合わせ等で直行、夜は取引先の接待で直帰しており、他の支店の従業員と比べても打合せや接待の回数が異常に多いことと、休日出勤も多いことがわかった。

 これらに不信感を抱いた丸山社長は、本社の従業員に四ツ谷課長の行動について可能な範囲で裏を取るように指示を出した。そして丸山社長は四ツ谷課長と話をしようと、抜き打ちでF支店を訪れた。

(注1)職場のパワハラは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」(厚労省の「職場のパワーハラスメントの定義」より)をいう。上司より技術力が高かったり、経験があったりする部下が、適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を上司に与える行為もパワハラとされる。