自分が買った投資信託がある日突然、運用停止になり現金になって戻ってきたら…?! 資産運用の王道は「長期・積立・分散」ですが、資産運用ロボアドバイザー「ウェルスナビ」CEOの柴山和久さんですら、長年お金の仕事に携わりながらも、多くの失敗をしてきたと言います。そして、その失敗からは多くの個人投資家の方にも通じる問題が見えてきそうです。書籍『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』より、一部をご紹介していきます。

 資産運用の王道は「長期・積立・分散」ですが、私もそこにたどり着くまでに10年かかりました。その間にいろいろな投資を試みては、その度に失敗してきたのです。前回まで、銀行の特別待遇に舞い上がって失敗したり、過去のリターンの実績だけをよりどころにして失敗したときのことを赤裸々にお伝えしました。今回はそれらの失敗を踏まえてさらに別のトラップ(?!)に引っかかった経験をご紹介します。

第3の失敗:結局のところ銀行のブランドに惑わされ…

次にトライしたのは世界に分散投資するバランス型の投資信託

 日本小型株の投資信託と同じ時期に買ったのは、世界全体に分散して投資するバランス型の投資信託でした。資産運用の王道は「長期・積立・分散」なので、はからずも正しい選択をしていたことになります。

 この投資信託を選んだのは、銀行のブランドを冠していたからです。当時の私には、専門的な説明は理解できず、5段階のリスクの中から債券が中心の資産配分を適当に選びました。

 債券が中心だったので大きなプラスのリターンが出るということはなく、為替の影響も受けました。ただ平均して年2~3%くらいのリターンはあり、決して悪い商品ではありませんでした。

 ところがある日突然、この投資信託が運用停止になり、その時点の資産価値で現金になって戻ってきてしまいました。資産運用の世界では「早期償還」といってよく起きることなのですが、当時の私はこうしたリスクをまったく認識しておらず、寝耳に水の出来事でした。

第3の失敗から学んだこと

 損失を出したわけではないので、「失敗」は言いすぎかもしれません。

 しかし、世界全体に分散投資する投資信託の中でもっと安定したものを選んでいれば、もっと長く資産運用をすることができたはずです。

 この投資信託は銀行のブランドを冠し、運用方針も手数料も良心的でした。皮肉なことに、良心的であるがゆえにアピールポイントに乏しく、ビジネスとして成り立たなかったのでしょう。早期償還によって顧客に迷惑をかけることになるので、銀行の担当者は断腸の思いだったはずです。

 早期に償還されると、現金でそのまま返ってくるので、直ちに損失が発生するわけではありません。しかし、何の前触れもなく長期投資が中断してしまうことの心理的なショックや、税金の効果まで考えると、長期的な資産運用のリターンは下がってしまいます。

 私の失敗は、銀行のブランドだけで短絡的に判断してしまったことです。銀行のブランドを冠しているくらいだから大丈夫だろうと楽観的に考え、十分な安定性を備えるだけの純資産総額があるかどうかを調べませんでした

 資産運用は、コストのかかる事業です。金融の専門家に加え、ITシステムも複雑で定期的なアップデートが必要です。事務処理にミスは許されません。定期的にパフォーマンスを計測し開示するにもコストがかかります。残念なことに、運用方針や手数料が良心的であればあるほどこうしたコストをカバーできず、赤字に陥りやすくなります。

 アメリカでは、純資産総額が数兆円の投資信託が人気です。大規模になれば、良心的に運営していてもコストをカバーできるからです。日本では、預かり資産が100億円に満たない投資信託が全体の8割を占めています(「平成28事務年度 金融レポート」(金融庁、平成29年10月発行))。日本の投資信託を買うときは特に、純資産総額を確認し、長期投資を託すにふさわしい安定性があるかどうかを確認する必要があります。