テクノロジーの覇権争いで米国と中国が火花を散らすなか、シリコンバレーのある半導体企業は双方に「武器」を供給している。人工知能(AI)のカギを握る画像処理半導体(GPU)を製造するエヌビディア(カリフォルニア州サンタクララ)は、ウーバー・テクノロジーズには自動運転車向け、マイクロソフトにはクラウドサービス向けにそれぞれAI用半導体を供給している。売り上げは中国向けの方が多い。巨大ハイテク企業のアリババグループや百度(バイドゥ)をはじめ、顔認識AIなど国内の警察・監視技術を開発する各企業、中国の軍事研究者と協力する大学の研究室なども、エヌビディアの製品を購入している。米中が「新冷戦」に向かいつつある今、両陣営との関係維持をもくろむエヌビディアの姿勢は、綱渡りの様相を帯びつつある。インテルやクアルコムといった他の米半導体大手も中国市場に進出しており、それぞれ有力なハイテク企業やAI新興企業を取引先に持っている。だがAI用半導体市場で圧倒的な優位性を持つエヌビディアは、シリコンバレーが中国の技術向上にいかに貢献しているかを示す最も顕著な例だといえる。