キャッシュレス化や個人情報管理など、社会の中心的なインフラが急速かつ本格的にデジタルへと移行しつつある。そんな時代の「銀行」は、どのような存在になるのか。昨年『WIRED』日本版編集長を退任、出版社・黒鳥社(blkswn publishers)を設立した若林恵氏に聞く。(ダイヤモンド・オンライン編集部)
――ご無沙汰してます。ちょうど1年ぶりくらいですね。
そうですね。ダイヤモンド・オンラインさんには昨年のちょうど今ごろ、お世話になったのでした。
――で、今回は、なんかムックを新しくつくられたそうで。
そうなんです。1年ぶりに真面目に1冊丸々雑誌を編集しました。
――『NEXT GENERATION BANK 次世代銀行は世界をこう変える』という雑誌/ムックなんですね。銀行?なんで?ってのが率直な感想でしたけど。だいぶ具体的なテーマだな、と。
スペキュラティブな未来の話をしてる場合じゃないって感じがあるのかもしれないです。
――どういうことですか?
ここにきて時代が急激に新たに動き出してる感じがしてるんだと思います。本当の意味で社会がデジタル化するんだなって感じです。ちょうどトランプの大統領選のあたりから、それまで続いてきたデジタル変革に対する疑念が強まり出し、それが2018年のフェイスブックのケンブリッジ・アナリティカの問題で極点に達し、一方で欧州でGDPRが施行されるといった動きもあって、半ば嗜好的なものでしかなかったインターネットやスマホが、いよいよ社会の最も実質的な領域に到達したというか、必要不可欠な社会インフラとなってきたというか。そうしたなかで、すでに争点は、テクノロジーそのものから法整備も含めたシステム全面的な再設計に移ってきているわけですから、それを決定していく上で、これから望ましい社会がどういうもので、それを支える理念は何なのかといったあたりを、早急に再検討する必要があるように思えるんです。