そんな山根教授が「引きこもり支援」に着目したのも、「従来の行政の保健所主導だけでは、引きこもりに特化した支援ではなく、職員が異動するために継続支援が難しかった。また、家族からは、引きこもりが長期化する焦り、親亡き後の不安や経済的な問題などが頻繁に語られ、対応方法がわからないとの訴えに対して、聞き流すだけで個別的な支援がなかった」からだと説明する。

「宇部市の事業として認めてもらうまでにも、“引きこもりは障害者ではないから市の施策に入れられない”などと言われ、2年かかりました。ボランティアとしてやることはできたのですが、支援を継続していくためにはきちんとした体制が取れないからと、あきらめずに訴えたのです」

 さらに、山根教授は自らの孤独死の研究を通じて、「親の死→子の死」という「ひきこもり親子の孤独死」の存在を目の当たりにし、ケアマネジャーの研修においても、年々支援困難とされる事例の中に「ひきこもりの子がいる」といったケースが増えてきたという背景があったことも、理由に挙げる。

家族関係を変化させて
個別支援に繋げる抜本対策

ふらっとコミュニティの事務所内の風景。右端が山根教授

 そこで考え出された新たな支援の仕組みが、「ふらっとコミュニティ」を拠点にした地域支援ネットワークを構築する「ひきこもり相談支援充実事業計画」だった。月に2回、相談窓口を設置し、家族に引きこもる本人の“生きづらさ”への理解やコミュニケーションを進めるための家族心理教育、本人が面会を希望する場所に訪問して個別支援するアウトリーチ、居場所の設置などを進め、今年度からは就労支援も始めた。

「従来の家族支援ではなく、家族自身が子どもにどう対応したら良いかを具体的に学ぶ機会の提供が必要であると考え、家族関係を変化させて個別支援に繋がるための支援のあり方を検討する『ひきこもり家族心理教育プログラム基礎編』を作成し、実践することにしたのです」(山根教授)

 不登校から引きこもり続けていた20代の女性は、夜間の外出時も自宅に訪問したときも、近所や知り合いの視線を気にしてマスクが外せなかったのに、最近開いた「女子会」には、マスクを外して来れるようになった。

 彼女のように行きたい場があっても行けないときは、先に親に行ってもらって、どんなところでどんな人が来るのか、写真などで見たり聞いたりしなければ、不安で怖くて動けないこともある。