「移民」と「シェアリング・エコノミー」が日本を救う

本田健(ほんだ・けん)
作家
経営コンサルタント、投資家を経て、育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は3500万ダウンロードを突破。著書は、100万部を突破した『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)など、著書は130冊以上、累計発行部数は700万部を突破している。2017年にはアメリカの出版社Simon & Schuster社と契約。初の英語での書下ろしになる著書はヨーロッパ、アジアなど世界25ヵ国以上の国で発売されることが決まっている。(Photo by 森藤ヒサシ)

本田:これからの日本は、どういう方向に進むと思われますか?

竹中:経済や社会のシステムを一度にすべて変えようとしたら、200年くらいかかってしまうかもしれません。けれど世の中には、「ボーリングのセンターピン」があるので、それを狙えばいい。センターピンを倒せば、残りのピンもパタパタ倒れていきます。小泉元首相にとっては、「郵政民営化」がセンターピンだったわけです。
今の社会のしくみの中で、何がセンターピンで、どこを突いたら効果が大きいかを考えることが大切ではないでしょうか。

本田:竹中先生が考える日本のセンターピンは、何ですか?

竹中:ひとつは、「移民法」だと思います。日本には、移民法そのものがないことが問題です。移民法がないということは、そもそも「受け入れる基準」がないということであり、「不法な移民を罰する基準もない」ということです。「受け入れ方の議論」すらしないで門前払いをするのは、おかしい。
日本の人口は、平成の30年間、ちょっと増えて、ちょっと減ったりしているだけで、ほとんど同じです。しかしアメリカの人口は、この間、実に30%増えていて、イギリスの人口も、15%増えている。つまり、グローバルな競争というのは、「人材獲得競争」である、ということです。日本は、それをかたくなに拒んできたわけです。

本田:「鎖国」と同じですね。

竹中:「移民を受け入れると治安が悪くなる」という意見もありますが、本当にそうでしょうか。シンガポールは4割が移民ですが、犯罪率は、東京より低いですからね。だから「外国人が悪い」のではなくて、「枠組みがないこと」自体が問題なんです。
赤穂浪士のひとり、武林隆重(たけばやし・たかしげ)の祖父は、豊臣秀吉による遠征軍で日本軍の捕虜となった明軍の中国人兵士だと言われています。赤穂浪士の中で、もっとも日本人的だった武林隆重には、中国の血が含まれている。このことを例にとっても、日本人が大和民族だけ、という認識はおかしいと思います。
それから、もうひとつのセンターピンは、「シェアリング・エコノミー(モノやサービスなどの交換・共有によって成り立つ経済)」の分野です。

本田:数年前から、ライドシェアの「ウーバー(Uber一般人が自分の空き時間と自家用車を使ってサービスを提供できる。スマートフォン経由での配車が可能)」や、宿泊空間シェアの「エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb/空いている部屋や家を貸したい人と借りたい人とのマッチングサービス)」などが注目されていますね。

竹中:ライドシェアは、過去5年くらいの間で、もっとも成長した産業です。Uberの企業価値は、「7兆円」を超えていると言われています。メガバンクでも6兆円ですから、メガバンクより大きい企業が、わずか8年でできてしまったわけです。
ところが日本では、関連業界の抵抗もあって、ライドシェアを規制している。この問題は、極めて大きいと思いますね。

本田:ここでも、鎖国の状態ですね。

竹中:「成長戦略」と言いながら、世界最大の成長産業に背を向けているのですから、矛盾しています。
もちろん「最初から完璧なもの」はありませんから、ウーバーにも、事故はあります。でも、だからといって「閉鎖する理由」にはならない。
今年の「ダボス会議」で、イギリスのメイ首相は、「ウーバーに反対する人はたくさんいるけれど、これを、全面的に拒否してはいけない。新しいものを受け入れながら、改良していかなければいけない。それが進歩だ」という主旨のことを、固有企業名詞をあげて明言したのですが、本当にその通りです。「賛成」や「反対」だけでなく、「その間を考えていく柔軟性」が必要だと思うのです。

本田:今、竹中先生が危惧する日本の問題、課題は何でしょうか?

竹中:日本にとっての赤信号は、「介護難民」の問題でしょう。私にも94歳の母親がいるのですが、介護には本当にお金がかかります。
日本は、穏やかに死んでいくためのコストがとても高い。けれど、日本人は、そのための貯えができていない。このままだと、施設に入れない人で日本は溢れかえってしまうかもしれません。
でも私は、悲観していないんです。「明治維新」がそうだったように、日本人には、思い切って変わる力があるからです。